第17話

>>>ウィル、初めて街で買い物をする。



私は朝起きてご飯を食べると、身支度を整えて早速家を出た。


別にお忍びというわけでは無いが、あまり目立ちたくもないので、

白い生地の胸元がレースアップになったプルオーバーシャツに、ベージュの細身パンツと黒のロングブーツを合わせ、髪にはベージュの革紐を巻くというシンプルな格好にした。

そして薄手のローブを羽織った。


まずは竜の涙と言われる石の加工を頼むために貴族街にある宝石店へ。



予約なく訪れたので、店の人が驚いていたが、店長らしき人が私のことを知っていて、今の時間は予約も入っていないそうで奥に通され話を聞いてくれた。


そうか、貴族街にある店は予約が必要なのか。


「おぉ、これは珍しい石ですね。私もこの石は過去に一度しか見たことがありません。」

「そうですか。先日行商人の友人から買ったんですが、加工をお願いしたいのです。」


「お任せください。どのような形になさいますか?」

「着用するのは、私の祖父母だ。こちらを祖母のネックレスに、こちらを祖父のタイピンにして欲しい。」


「かしこまりました。デザインのご希望はございますか?」

「デザイン・・・。」


「見本をお持ちいたしますね。」

「助かります。」


宝石店の店長はたくさんの絵が描かれた紙の束を持ってきた。


「こちらからご希望のデザインをお選びください。

もちろん、ここにないデザインも対応可能ですよ。」

「では、ネックレスはこの絵のような感じで、タイピンはシンプルなこちらのデザインでお願いします。」


「かしこまりました。完成までに10日ほどのお時間をいただきますが、お届けは侯爵様のお邸でよろしいですか?」

「えぇ、家令に伝えておきます。」


完成したら邸に届けてくれるそうだ。ありがたい。




次にラオの実家のヘンドラー商会へ向かう。

ヘンドラー商会は、貴族街と平民街の間にあって、とても立派な店構えだった。


「あれー?ウィル、早速来てくれたんだね。」


店内に入るとラオがいて、買い物が初めてだと伝えると、色々案内してくれると言う。


マッチョポーズシリーズのペーパーウエイトは色々な種類があった。


オレンジと紫の熊、黄色にピンクの水玉柄の猿、水色の牛、青と黄色の格子柄の馬、緑のウサギ、白と赤の人型もあった。


私は全種類を買った。


家と中隊長室で使うし、未処理、優先、処理済と書類を3つの束に分けているので、ちょうど6種類あって良かった。

動物は私用で、白と赤の人型は団長にあげようと思う。



「ラオニッシャー、閣下を立たせたままにするんじゃない。奥にご案内しろ。」


他にも、色々見ながらラオの説明を聞いていたら、ヘンドラー商会の会頭が出てきた。



「さぁさぁ、どうぞどうぞ。」

私はニコニコ顔の会頭に、奥にある個室に連れて行かれた。



「ありがとう。」

紅茶を出してくれたラオにお礼を言うと、ラオは少し申し訳なさそうな顔をした。



「私はウィルバート・フェルゼンと申します。

今日は気楽な感じで見せていただいていたので、このようなお気遣いは要りませんよ。

ラオと私は友人ですし。」


会頭に向き合うと、簡単な挨拶をした。



「お初にお目に掛かります。

私はラオニッシャーの父でヘンドラー商会会頭のコルプ・ヘンドラーと申します。

フェルゼン侯爵閣下に当商会をご利用いただき、大変嬉しく思います。

また、愚息とも仲良くしていただいているようで、ありがたい限りです。」



「私が侯爵だとご存知なんですね。お会いしたことありましたか?」

「いえ、初めてでございます。商人であれば貴族の顔と名前は暗記しております。」


「そうでしたか。それは凄いですね。」



会頭とラオと3人で少し雑談をして、私は店を出た。


「「またのご来店お待ちしております。」」


買ったものは邸に届けてくれるそうだ。荷物にならなくて良かった。




平民街に入ると、周りを歩く人が一気に増えた。ローブのフードを目深に被って歩みを進める。

普通の店舗もあれば、道端に布を敷いて、その上に商品を並べて売っている者もいた。


私は道端で絵を売っている男の前で立ち止まった。

並べられている絵は、抽象画がほとんどで、大きさも様々なものがあった。



目に止まったのは、森のような緑色が絡まった中に白い人型がボンヤリと浮かんでいる絵だった。

森の妖精かな?


かなり大きい。高さ1.2メートル横幅80センチくらいだろうか。


「これはいくらですか?」

「銀貨5枚ですが買いますか?」


「ええ、買います。」


隊員の給料が、月に銀貨15枚なので、高いといえば高いが、絵の相場が分からないし、何よりこの絵にならその金額を払っても良いと思った。


銀貨を払うと、絵が汚れないように布を丁寧に巻いてくれた。



これは困ったな。馬車で来るべきだったか・・・。

仕方ない。もう帰るか。


帰りに買うべきだった。


今後大きなものを買う時は帰りに買うか馬車で来るようにしよう。



この絵は中隊長室に飾ろう。

邸は色々飾ってあるが、中隊長室には絵画や調度品が無いからちょうど良い。



家より本部の方が近いし、このまま持って行くか。

その日の午後、中隊長室には絵が飾られた。



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お金の価値

銅貨(100円)

小銀貨(1,000円)

銀貨(10,000円)

小金貨(100,000円)

金貨(1,000,000円)

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