第15話
>>>陛下と宰相と団長
第二回ウィルを守る会会議
ここに国のトップが集まっている。
「えー今回集まってもらったのは、我らがウィルの夜会での怪我についてだ。」
まずは陛下の言葉から始まる。
「我らがウィル?なんだそりゃ。
いや、悪かったよ。早々に帰ってしまって。まさかそんなことになるとはな。」
今回からは団長も参加するようだ。
「いやぁ申し訳ない。
この前ダイターに注意するよう言われたばかりだったのに。」
コーエン卿が申し訳なさそうに俯く。
「やっぱり私も参加してウィルについていてやるべきだったんだ!
さすがに国王である私が隣にいる時に突撃はして来まい!」
「ダイターがずっと張り付いていたら良からぬ噂が出るぞ。」
「そうですよ。ゲストとして短時間の参加ならまだしも、ずっとウィルに張り付いているなど不自然です。」
「贔屓しているとか言って妬まれて、今度は男からも突撃されるんじゃないか?」
「む・・・それはよくないな。」
「やはりウェスリーの隣にリリーがいたように、特定の恋人を作るのが1番いいのでは?」
「君たちは、ウィルが怪我をした時に令嬢に向けた、凍えるような冷たい目を見ていないからそんなことが言える。」
「何だ?コーエン、それは自分だけが知っているという自慢か?」
「違う。あれは完全に敵を見る目だった。
あんな目を向けられたら、私でも・・・
とにかく、ウィルは今は女性を受け付けない。」
「まぁ、そうだろうな。
俺が娼館に誘ってみた時は、まるでケダモノを見るような目で冷たく断られた。」
「おい!ウィルに要らんことを教えるな!」
「まぁ、フェルゼンの爺さんも、家に届いた釣書はウィルに届く前に潰してるらしいしな。」
「それなら私も潰しているぞ。まだ時期じゃない。」
「ダイター、気付いているか?
ウィルに対する考え方が娘を思う父親みたいになってるぞ。」
「いいんだ。それでウィルの心を守れるなら。」
「令嬢が参加しない夜会があったらいいな。」
1人増えて3人になったウィルを守る会は、今後も開催されるだろう。
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鬱々と過ごしていると、ヴィントから飲みに行かないかと連絡があったので、すぐに約束を取り付けて向かった。
彼は色々な物に、魔術を付与する研究をしているのだという。
説明は専門的すぎて半分くらい分からなかったが、父が剣に炎を纏っていたという話をすると、
普通は剣技を習得している魔術師が、剣に魔術を纏わせて使う技だが、研究が進めば、『魔術を纏った剣』という誰でも扱える炎の剣ができるのだとか。
今の彼の技術では、剣に炎の魔術を付与しても、剣の先に小指の先程度の炎を灯すことしかできないそうだ。
いつか炎を纏う剣を作ってみたいと、目を輝かせていた。
現在研究所では、そのような攻撃性のある武器ではなく、薪に火をつけるために使う、ボタンを押すと小さな火が数秒出る棒状の道具など、日常生活で役立つ道具を作っているそうだ。
数秒じゃなくて竈の下で炎がしばらく燃えてくれる道具があれば、薪不足の年には助かりそうだな。と言ったら、
「そのアイデアもらった!」
そう言って、ポケットから取り出した紙の束にメモを取っていた。
彼の話はどれもためになる話で、とても有意義な時間となった。
今度研究室に招待すると言われた。騎士団にも招待しようか?と聞くと、笑いながら遠慮する言われた。
戦いしか知らない世界で生きてきた私にとって、彼はとても輝いて見えた。
その後、何度かヴィントの研究所にお邪魔して、彼にはいくつか隊の備品を作ってもらった。
ボタンを押している間、水が出る筒、これは遠征の際に水場が近くにない時に役立った。
魔術部隊の面々が元気な時ならいいが、戦いの後など、魔術師の魔力が残り少ない時にはとても助かった。
旅人や狩人などにも人気が出たそうだ。
温かい風が出る箱も、雨の日の遠征には欠かせなかった。
寒い日は、テントの中でしばらく稼働させるとテント内が暖かくなって快適だった。
寮の風呂にも設置したら、髪を乾かすのにいいと取り合いになった。
髪を乾かすのに使えるならと、私の邸にも設置したら、祖母や髪の長いメイドが喜んでいた。
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