第12話
>>>コーエン卿とダイター陛下の話
第1回ウィルを守る会会議
「コーエン、君この前ウィルバートくんと飲みにいったんだって?」
「ええ、まぁ。」
「ずるいんじゃないの?私も行きたかった。」
「それより、ウィルは・・・。」
「ウィルと呼んでいるのか?いつの間にそんな仲になったんだ?私も呼びたい。」
「それはお好きになさったらいいのでは?」
「で、ウィルが何なんだ?」
「あ、いや、ただ単に好き嫌いが多いのかもしれませんが、肉が苦手だと。
あの年頃で、騎士団という体を動かす場所にいるのに、肉が苦手な理由って・・・。」
「本人に自覚があるかどうか分からないが、おそらく想像の通りだと思うよ。
両親を目の前で、しかも幼い頃から戦場にいたんだ・・・。」
「ですよね・・・。」
「なんとかしてやりたいな。」
「私もそう思います。」
「ウィルは感情が表に出ないし、流れに逆らわないと言うか、色々な不満を飲み込んでいるような節がある。
何をされてもなかなか断らないしな。」
「うーん、確かに。そう言われるとそんな気がしてきました。」
「甘えるのも、頼るのも、苦手そうだ。」
「器用ですからね。無茶な問題もウィルなら自分で解決してしまうので、そのせいも有るかもしれませんね。」
「コーエン、今度ウィルを夜会に招くんだろ?
気をつけて見てやれよ。」
「分かってますよ。
彼は誰もが振り向くような見目麗しい容姿をしていますからね。
学園時代あなたと人気を2分したウェスリーと本当にそっくりで。」
「ウェスリーにはリリーが居たからな。
居なければ私の完敗だよ。おかしくない?私は王子だったんだよ?
まぁ、そんなウェスリーでも、あわよくばと問題を起こす奴はいたからな。」
「私たちが守ってやらないと。」
「そうだな。」
ここでひっそりと、国のトップによるウィルを守る会が結成された。
>>>隊員と飲みたい
私は翌日から、定時に帰れる日は毎回、自分の隊員を連れて飲みにいくことにした。
これは意外と良くて、アルコールが入ると口が軽くなるのか、本音を話してくれるようになった。
意外と小さなことでも不満を持っているものは多く、改善できるところは改善していった。
改善案を考えている者の案も取り入れて、うちの中隊はかなり変化をしていった。
小さなものでは、意見を言える機会を増やしてほしいとか、隊の独断ではどうにもならない大きなものでは、報告書の形式の内容を変更したいとか。
変なものだと、寮の風呂の石鹸を香り付きのものに変えてほしいとか、中隊長(私)の目が冷たいとか。
最初は私が誘ったのだから断れずに仕方なく行くという感じの隊員もいたが、今では定時が近づくと、今日飲み会に参加するメンバーが中隊長室に押しかけてくるようになった。
隊の不満や改善点を聞く代わりに、彼らには酒を教えてもらった。
私はアルコール耐性が高いようで、エールでは何杯飲んでも酔えなかった。
テキーラをショットで飲んだり、ウォッカやウイスキーをロックやストレートで何杯か飲めば、身体全体がほんのり温かくなり、フワフワとした気持ちになることが分かった。
軽い酩酊状態は、好きだと思った。
私の中隊は、飲み会で親睦を深めたせいか、隊員同士の連携が高まり、不満も減って些細な軋轢もなくなった。
不満を気軽に話せる仕組みにはなったが、やはり全ての希望を叶えることはできない。解決はできなくても、とことん話を聞くことで妥協したり納得したりという方向へ持っていくことはできた。
その経験は、領地の領民から上がってくる様々な意見の解決にも役立ちそうだと思った。
たまに、うちの隊員の繋がりで、別の隊の隊員が混ざることや、戦士部隊の隊員が混ざることもあって、それはそれで皆んな楽しそうだったし、別角度からの意見も聞けたので、私も楽しかった。
コーエン卿ともたまに飲んだ。
その時に隊員で飲み会を頻繁に開催して意見を出し合っている話をしたら、コーエン卿も参加したいと言い出し、
メンバーが少ない日の飲み会に連れて行ったら、隊員が恐縮してガチガチになっていた。
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