傭兵の実力

団長は逡巡していた。


ベナットが持ってきた提案を受け入れていいものか。



ことの発端は、ベナットの知り合いの傭兵2人が城門でベナットを出せと暴れたところから始まる。

団員が交戦するも全く手も足も出ず。

慌ててベナットを呼びに走り、ベナットが到着すると、ベナットは傭兵回収して街へ行ったそうだ。


たまたま席を外していた俺の部屋の机には、ベナットが書いた俺宛のメモがあった。


『傭兵の知り合いが来ました。

俺に用があるので出掛けます。

怪我をした団員がいます。』


文字は覚えたようだが、情報が少なすぎる。報告書の書き方を教えようと団長は決めた。



そして先ほど戻ってきたベナットから聞いた追加情報では、どうやら王がベナットについてコソコソ調べているのを傭兵の仲間が見つけて、この国の仕業である事が判明。

大怪我をしているはずのベナットが戦地から遠く離れたこの国にいるのがおかしい、動けないのをいい事に連れ去られたのでは?と心配して城に押しかけたと。


そして、自分の本当の実力を知る彼らが、現在のベナットの状態を、手合わせをして見てくれると言ったそうだ。

しかし、王都や近郊に広い更地が無いため、騎士団の演習場を借りれないか?との相談だった。

彼が認める実力者のため、団員も見学する事で何が得られるものがあるかもしれないとも言う。


ベナットが認める程の実力を持った傭兵を城壁内に入れてもいいものか・・・


俺の判断では決められないと、陛下に判断を委ねる事にした。

関係者なのでベナットも連れて行く。




陛下の執務室に入ると、ベナットは俺の斜め後ろで直立不動となった。


俺が今日の出来事と、傭兵とベナットが手合わせをするために騎士団の演習場を使いたいと言っていることを説明した。


「というわけで、私では判断できかねる内容でしたので、陛下に判断をいただきたい。」


「いいんじゃないか?なぁ?」

「いいと思います。ベナットを心配してこの国まで来るような方なら問題ないかと。」


「私たちも見たいな。ベナットが戦うところ。その傭兵たちの戦いも。」

「見たいですね。」


「いつにする?明日か?いつ予定が開く?」

「明日でしたら、午後なら時間が調整出来そうです。」


「じゃあ明日の午後にしよう。」



「ベナット、それでいいか?」

「はい。」


「それと一つだけ聞いておきたい。傭兵2人が暴れた場合、ベナットなら止められるか?」

「分かりません。彼らは強いので。しかし、彼らは戦場以外で武器を人に向けるような人物ではありません。私が保証します。」


「ベナットがそう言うならいい。下がっていいぞ。」

「はい。失礼します。」




「ベナット、お前、なんか陛下に気に入られてるな。」

「は?」


「陛下にだけじゃない。宰相にも。」

「そんな事はないだろ。一度しか会った事がないのに気に入られる理由がない。」


「そうかねー?」

「俺にはそんな風には見えなかった。」

むしろ愛娘カロリーヌを唆したと嫌われているのでは?



翌日、2人を演習場に連れて行くと、演習場には国王陛下と宰相が見学に来ていた。

その隣には団長とカロリーヌがいる。


皆んなに軽く2人の事を紹介した。

そして、危ないから絶対に柵から出ないよう言及した。


「疾風は今日は何使うの?」

「何でもいい。木剣でもいいし、刃を潰した剣や槍でもいいし、真剣でも。

でも、致命傷になるような攻撃は無しでお願いしたい。」


「それは俺たちも同じだ。お互い怪我をしたら仕事に支障が出るからな。

お互い2割くらいで軽く打ち合う程度で様子見しようと思ってる。」

「分かった。」



「で、俺は疾風にはいつものハルバードを使ってもらいたい。俺もいつものパルチザンを使う。」

「分かった。炎舞は?」



「俺は今の疾風の全力を見てみたいから、疾風にはダガー使って全力で駆けてみてほしい。俺はいつものシミター2本で。

ハルバード使われたら俺は防戦しかできない気がするからー」


「分かった。」

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