傭兵仲間2
俺は2人を連れて個室のある酒場に入った。
「お前ら生きてたんだな。彼女から俺が寝ている間に挨拶に来たとは聞いていたが・・・。」
「お前が1番重症だったな。ずっと起きないからもうダメかと思った。俺は肩をやられて、炎舞は足をやられた。」
「あぁ。俺も何度か死を覚悟した。」
思い出しただけで全身の痛みが思い出された。
「皆んな生きてて良かったよね。」
「そうだな。」
「あぁ。」
「で、今回の城への襲撃の理由は?」
「襲撃したつもりは無い。
俺たちは戦地を離れてからは別々に行動してた。治療を進めつつ、戦争が長引けばまた戦場に戻るつもりで、身体も調整していた。」
「そうそう。お互い戦地でしか顔合わさないよねー。
で、疾風のことも気になったし、戦地の情報を集め始めたんだ。
そしたら、疾風の過去の情報を嗅ぎ回ってる奴がいて、そいつを追っている時に俺と銀狼は会ったってわけ。」
「そうだ。それで、そいつをちょっと締め上げたら疾風がシュタットにいることと、そいつがシュタットから来たことを吐いた。」
「戦争と関係ない国が、疾風を調べてるって怪しいよね。」
「・・・。」
「で、あれだけの怪我をしてた疾風が1ヶ月半も経たないうちにシュタットまで移動していることにも違和感を感じて、俺と銀狼はシュタットまで来ちゃった。」
「外門で聞いたら、疾風は城にいると言われたから、最悪捕えられたのかと思った。」
「それで城に行ったのか・・・。」
「でも、君の嫁を見て分かった。君の嫁がこの国の人だから無茶をしてここまで帰ってきたんだなって。」
「すまん。心配をかけた。
そして彼女はまだ嫁ではない。」
「しかし、疾風のことを嗅ぎ回ってる奴がいる。」
「それはたぶん・・・彼女の父親の関係者だと思う。
と言うのも、彼女はこの国の王女なんだ。」
「へぇー、それで?」
「野盗に襲撃を受けた時に助けたら、追い回されて、戦争に行く前にはちゃんと俺は傭兵だから気持ちには応えられないと断ったんだ。でも、俺が倒れたのを察して戦地に来てしまった。」
今考えても、カロリーヌにあんな危険な場所まで来させてしまったことを思うと、苦い気持ちになった。
「ああーそれで献身的に看病されて疾風はその王女様に落ちちゃったわけだ。」
「いや、まぁ、そ、そ、そう、かな。」
傭兵相手にこんな話をする事になって、恥ずかしすぎて頬を掻きながら下を向いた。
「うわっ何なの?その反応。見たことない。疾風でもそんな顔するの?」
「うるさい。」
「純真だな。ククク」
「でも、疾風が城にいるってことは上手くいってるんでしょ?」
「まぁ、そう、かな。
今度ある武闘大会で優勝すれば2人の関係を認めてやると、国王陛下が言ってくれて、今は騎士団に所属している。
その・・・文字とかマナーとかも、一応勉強してるけど、それだけで彼女に相応しい男になれるのか分からなくて、でも彼女を手放したくないし・・・」
「「・・・。」」
「それに、俺、今まで、れ、恋愛とかしてこなかったから、気づかないうちに彼女を不安にさせた。
彼女を繋ぎ止めておく方法が分からないし、俺も彼女にいつ嫌われるかと怖い。俺は実は凄く臆病者なのかもしれない・・・。」
「何それ!純愛すぎて何か痒くなってきた!
嫁を繋ぎ止めるには、目を見てキミだけだよって微笑めば大丈夫だと思うよ!」
「可愛いな。疾風は。ククク」
そう言いながら、銀狼は俺の髪をぐちゃぐちゃにした。
「ねえねえ、武闘大会って俺らも出れるの?殺し合いじゃない戦いなら一回疾風と戦ってみたい。」
「うむ。面白そうだな。」
「やめてくれ。お前らが参加したら俺が優勝できん。今でも、優勝できるか危ういんだ。」
「さっき城でちょっと遊んだ感じ、疾風の敵になりそうな奴はいなかったよ。」
「怪我か・・・?まだ治ってないのか?」
「あぁ。まだ腕が肩以上に上がらんし、足がな・・・」
「そうか。疾風の足が封じられたとなると、なかなか厳しい・・・のか?それでも問題無さそうだが。」
「どの程度なのさ。足は。怪我の前を100としたら、今出せるスピードはどれくらいなの?」
「ここ1ヶ月みっちり訓練してやっと50か60くらい。」
「そうか。それだと戦場では怪我するかもしれんな。しかし、武闘大会なら大丈夫だろう。なんなら俺がちょっと手合わせして見てやろうか?」
「えー銀狼だけズルくない?俺も足が遅いなら疾風と手合わせしてみたい。」
「俺の全盛期を知っているお前らが見てくれるなら有難いが・・・。」
場所がなぁ。王都周辺は森で開けた場所が無い。騎士団の演習時を借りるか?借りれるのか?部外者を入れても大丈夫か?
「お前ら今夜の宿は?」
「まだ決めてないけどお勧めがあれば教えてくれる?」
「前に俺が宿として使っていたフォーゲル亭って宿屋はなかなか良かった。食堂も公衆浴場も近くて。
戦争の情報ならリーベって酒場の髭のマスターに聞くといい。ベナットの知り合いだと言えば問題ないだろう。」
「ありがとう。」
「手合わせは、団長に演習場を使っていいか聞いてみる。王都は周辺が森で開けた場所が無いんだ。」
「分かった。許可が降りたら宿に知らせてくれ。知らせが無ければまた城門まで行くぞ。ハハハ」
「銀狼が言うと冗談に聞こえないな。」
その後、戦場を退いてカロリーヌを帰した後、魔女の婆さんに助けられた話もした。
「ねえねえ、なんか不思議な感じだよね。この3人で酒場で座って酒飲むなんて初めてだし、そんな日が来ると思ってなかったし。」
「そうだな。一緒に飯を食うとしても、配給の不味いスープとカチカチのパンだったからな。」
「疾風の恋バナ聞く日が来るとは思わなかったー」
「・・・。」
「確かに。戦況や作戦の話しかした事なかったな。俺にとっては炎舞とここまで旅をしたのが意外すぎた。」
「疾風はもう今日は帰っていいよ。愛する嫁が待ってるでしょ?」
「・・・じゃあ、もうそろそろ・・・お前らはまだいるのか?」
「俺らは別に今のところ熱い夜の予定は無いからな。ククク」
「そうそう。そういうことー」
「そ、そんなの俺も無い。2人してニヤニヤするな。もう行く。」
俺は席を立った。
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