傭兵、初めての騎士団
翌朝、早朝に鐘の音で起こされ、訓練場に集められた。
俺はそこで騎士団員達に紹介された。
「ベナットです。
傭兵をやっていたので、敬語はまだ拙い、です。迷惑をかけると思う、思いますが、よろしくお願いします。」
皆の反応は正直よく分からん。
意外にも差別や嫌悪の視線はなさそうだ。
好奇と、見定める感じが大半か・・・。
挨拶の後、訓練場の周囲を皆んなでランニングし、その後汗を拭いて朝食だった。
食堂は、戦場の配給みたいだと思った。
空いた席に着くと、向かいに人懐っこい笑顔を浮かべた青年が座った。
「俺はカイ。産まれは平民だ。ここでは平民出身も多いから敬語は気にしなくてもいいよ。」
「そうか。それは助かる。」
「で、強そうだけど、実際はどうなの?」
青年はニコニコしながら聞いてきた。
「どうと言われても・・・。」
「じゃあ傭兵歴と得意な武器と、二つ名があれば教えてよ。」
「傭兵歴は15年くらい。武器は今使っているのはハルバードと小さめのダガー、ふ、二つ名・・・」
こんなところでも二つ名を知られることになるのか?
「傭兵から騎士団に取り立てられるくらいだから、二つ名あるんじゃないの?」
「いや、まぁ・・・。」
あまり言いたくないな・・・
「彼の二つ名は疾風よ。」
急にバラされて振り向けば、カロリーヌが何故か自慢げに立っていた。
「・・・カロリーヌ、様。」
「おい!聞いたか?皆んな!疾風だってよ!」
「疾風?あの疾風か?」
「戦ってるところ見たいな。」
「そこは戦ってみたいの間違いじゃないのか?」
「いや、俺にはまた早い。」
「ふふふ。反応は上々ね。」
騒然となる食堂内で、カロリーヌは俺の隣に座った。
「なぜここに、いるのです?」
「ベナットの様子を見にきたのよ。」
「そう、ですか。」
「お前ら騒がしいぞー!静かに食え!」
食堂に団長が入ってきた。
そして俺の前まで来ると、
「ベナット、お前このあと俺と戦え。どの隊に入れるか決めねーとなんだけど、お前の実力が分からん。
陛下から二つ名持ちだと聞いてるから、俺が直々に相手してやるよ。」
「はい。よろしくお願いします。」
国王陛下にも二つ名が知られていたか。あの監視からの報告だろうな。
「いい、いい、敬語なんか煩わしいだけだ。ここでは敬語なんか使うな。」
「わ、分かった。」
正直、敬語を使わなくていいのは助かる。でも勉強だけはしよう。
「それと、お前、城門のところに武器預けたままだろ?馬も。」
「あ。」
「もう飯食ったか?なら今から取りに行くぞ。」
「はい。」
俺は団長に着いて城門へ向かった。
武器を回収して、カロリーヌがくれた大きな馬も引き取って騎士団の厩へ連れて行った。
昨日は忘れていったので拗ねていたが、名前はヴィントだと伝えて撫でてやると、気に入ったようで頭をグリグリ擦り付けてきた。
そして今、演習場に来ている。
演習場は円形で、周りを囲むように1mほど高くなっていて、その境目に鉄の柵が2m間隔くらいで刺さっていた。
見学の騎士達も居て、彼らはその柵の外側の高くなったスペースから見ている。
「団長、ベナットはまだ怪我が完全に癒えてないの。無理はさせないで。」
カロリーヌが模擬戦前に口を挟む。
「怪我?いつ、どこをどうやられた?」
「1月前に、左足に麻痺毒の矢を、胸を横に向かってザックリと。」
「ベナット、それだけじゃないでしょ?
ほぼ全身打撲と無数の切り傷も。何日も意識不明だし、移動できるようになったのも10日くらい前でしょ?」
「何で知ってる?」
「分かるわよ。」
「・・・。」
「それ、よく生きてたな。その状態で模擬戦、できんのか?」
「大丈夫だと思う。」
「分かった。お前が大丈夫だと言うならやろう。ただし、傷が開いたり無理だと思ったらすぐに言え。」
「はい。」
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