続・陛下の憂鬱

「なぁ、寂しいもんだな。そんなにその男がいいのか?」

「そのようですね。」


「どんな男なのか、気になるな。」

「何でもクマのような男とか。

髪は爆発して顔の大半は髭で覆われ、獣の毛皮を身につけているため、本物のクマと間違えられるとか・・・

私も実際に見たことはありませんが、気になるならお会いになられては?」



「そうだな・・・。

なぁ、その男は、王都に来ると思うか?」

半ば冗談で会うことを提案してみたが、まさか陛下は本当に会う気なんだろうか?


「私には分かりかねます。」

「そうだな。」


「その彼が王都に戻ったら、陛下はどうされるのですか?

まさかカロリーヌ様を平民にするつもりはないでしょう?」

「それはできないが・・・。」




沈黙が続いた。



「その男、叙爵できないだろうか?」

「どのように?功績が過去の戦地での武勇では誰も納得しないでしょう。

武功を上げているのかも分かりませんし、他国での武功を我が国の叙爵の理由にはできないでしょう。

カロリーヌ様を救われた功績も叙爵するには少し弱いですね。」

「そうだな。」



「傭兵ですし騎士爵であれば、可能性はゼロではないかと。」

「騎士爵か・・・。

なぁ、その男は強いのか?」


「以前カロリーヌ様が襲撃を受けた際、騎士が複数人で敵わなかった相手を1人で倒している事から、かなり強いのではないかと思いますが、実際に戦いを見たわけではないので何とも・・・。」

「そうか。まぁでも傭兵をやっているということは、弱くはないだろうな。」


「そうですね。」

「よし、決めたぞ。今度の武闘大会にその男をエントリーさせる。

それで優勝でもしたら堂々と騎士爵をやろう。」


「なるほど、その手がありましたか。

しかし、優勝はなかなか難しいのでは?」

「優勝もできんようなその程度の平凡な傭兵に私の娘はやれん。

それくらいの気概がある奴なら、認めてやらんでもない。」


「まぁ、どうなるか分かりませんが、とりあえずはその案でいきましょう。

エントリーの手続きは私が済ませておきましょう。名前はベナットでしたっけ?」

「そうだ。ベナットだ。」


「・・・それと、もし王都に着いたら、王城に呼び出してくれ。傭兵だから謁見室はやめておこう。この執務室か、どこか適当な空いている会議室でもいい。」

「分かりました。」

陛下、本当に会うんだ。



「あれだ、その男の事を見極めんとな。ろくでもない奴なら、追い出すぞ。」

「分かりました。」

やっぱり陛下は傭兵の男の事、結構好きなんだな。



しかし、その夜、外壁の門に傭兵の男は現れず、カロリーヌは肩を落として帰ってきた。




  _ベナットが王都に到着するまであと1日。_

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