再会1/2 〜カロリーヌ視点〜
街道で馬車が襲われてから、私はしばらく外に出してもらえなかった。
やっと外出の許可が出たのは、襲撃を受けた日から10日も経ってからだった。
「どうしても直接べナット様にお礼が言いたいの!お礼もできないなんて王族としてよくないでしょ?」
「仕方ない。こうなったらもうカロリーヌは聞かないからな。
男は何処の馬の骨とも分からん傭兵だと言うじゃないか、どうせカロリーヌのいつもの一時の気の迷いだ。一目見ればすぐに間違いに気づくだろう。
好きにさせてやれ。」
「かしこまりました、陛下。」
護衛や侍女と共に職業斡旋所に行き、べナットのことを聞くとすぐに居場所は分かった。
彼と一緒にお昼を食べるために、城の料理人にサンドイッチを用意してもらった。
べナットは喜んでくれるだろうか?
べナットが働いているのは、何かの建物を作っている現場だった。
「やっと見つけたわ!べナット!」
やっと会えた。遠くから見てもすぐに彼だと分かる、あのクマのような大きな身体。べナットを見つけると、嬉しくなって駆け出した。
「は?俺?」
「探してたの。あなたは目立つからすぐに見つかったわ。」
「べナット、この貴族はお前の知り合いか?こんなのを連れてこられたら困る。作業の邪魔だからどうにかしろ。そんでそのまま休憩に入れ。」
彼は私のせいで、偉そうなおじさんに怒られてしまった。
「誰だ?俺に何の用だ?」
「もう。べナットってば全然会いにきてくれないんだから。」
ちょっと拗ねてみたら、べナットは困惑した顔で、私ではなく侍女を見た。
「カロリーヌ様、相手様は戸惑っておられますよ。お人違いなのでは?」
「何でよ?べナット、あなた私のこと忘れちゃったの?酷いわ。」
「・・・。」
私のこと分かんないの・・・?
「あ、お前、この前裸足で泣いてた奴か?」
「な!確かに泣いたけど、その覚え方は酷いんじゃない?」
覚えていてくれたのは嬉しいけど、泣いたのは忘れて欲しいわ。
「ああ、それより作業の邪魔になるから馬車を退けてくれないか?
そして帰ってくれ。」
「迷惑をかけるつもりはないの。馬車はすぐに退けるわ。お昼を持ってきたから一緒に食べましょう。あなたの分もあるわよ。
お昼を食べたら今日は帰るわ。」
本当にべナットに迷惑を掛けるつもりはなかったの。
一緒に食べようと思ってサンドイッチも持ってきたのに、帰れはないと思う。
「昼飯は持ってきているから要らない。
だいたいこんな建築現場に王女様が飯を食べるような場所はないし、何しに来たか知らんがもう帰ってくれ。」
「べナット、あなたに会いに来たに決まってるでしょ?」
「この前の襲撃の件で何か?騎士の現場検証には付き合ったし、証言の通りだと結論が出て終わったんじゃないのか?」
「そうじゃないの。私があなたに会いたかっただけ・・・。」
会いに来たってさっきも言ったのに。私はずっと会いたかったのに。
「はあ?余計に意味が分からん。」
べナットは結局、お昼に付き合ってくれた。
拒否したり、文句を言いつつ、最後にはちゃんと付き合ってくれるのは彼が優しい人だからだろう。
べナットがお昼のために屋台で買ったというサンドイッチを貰った。
パンは硬めで小麦も粗かったし、味付けは塩と少しのハーブだけだったけど、べナットが普段食べている物を食べることができて嬉しかった。
これ以上べナットに迷惑は掛けられないので、お昼を食べると城に帰ることにした。
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