第16話 撤退
私の家は
その距離ならば軽く歩ける、と先に進もうとしたのですが。
力尽きてしまいました。
歩いただけで死ぬことはないから、と歩き続けようとしたのですが、体がついて行きません。
ついて行かなくてよかったのです。
「歩いただけで死ぬことはない」なんてことはないので、脱水症状が
体が疲労しきると、判断力も働かなくなる。
ひとつの発想から離れられなくなって、それとは違うことを思いつけなくなってしまう。
その結果、思いこみだけで一方向に進んでしまうことになる。その結果、危険に気づけなくなるし、ばあいによってはかえって自分から危険に飛び込んでしまうことにもなる。
そのことを学びました。
自分が動けないと認識して、道ばたのベンチに腰を下ろしたのですが、そのまま歩けなくなってしまいました。
それで、立ち上がって少し歩いては休み、また立ち上がって歩く。さっきまでは上り坂もなんとか上っていたのですが、いまは下り坂でも休み休みです。何度も休みながら、ようやく「なら歴史芸術文化村」というところに到達します。
ここは、地図で見たときには学術施設かと思ったのですが、着いてみると、学術施設もありますが、ホテルもお土産屋さんも「道の駅」もある複合施設でした。
助かった、という思いでした。
まず、自動販売機で水分を補給し、「まるかつ」というレストランで食事をいただきました(「奈良名産レストラン&CAFE まるかつ」というらしい)。
これだけ歩いていて昼食をとってなかったんですね。
かつて、鉄道の廃線跡歩きというので、一日二〇キロ以上を歩いたことがあって、今回は歩く距離はそれの半分だから、と、油断していました。
しかも、もともと体調が悪かったのだから自重すべきだったし、水分補給を十分に考えていなかったのも大きな問題でした。
「まるかつ」さんで食事をとって体を休め、道も教えてもらって(ありがとうございます!)、最寄りの
そこまで歩けたのがふしぎなほどに歩けません。
足が
もう、足をどっちに向けても攣る、という、笑うしかない状態。
苦しくもあったし、困ってもいたけど、街角の小さい公園のベンチに腰掛けたまま、笑っていました。
「くやしい」という思いもありました。
目的地まで、毎日の通勤で歩く距離まで迫っておきながら、到達できなかったのです。
いろいろとよくない条件はあったものの、これほど歩けなくなり、限界が来やすくなっているのか。
もういちど鍛えて、もっと歩けるようにならないといけない、と思いました。
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