第11話 大和神社

 万葉まんようまほろば線の長柄ながら駅で大和おおやまと神社までの道順を確認して、大和神社へと向かいます。

 大和神社は、前に書いた崇神すじん天皇の「神祭り改革」の結果として生まれた神社です。

 このとき、王家(現在の皇室)の祖先神である天照あまてらす大神おおみかみが宮中から外に移され、最終的に伊勢に移るわけですが、同時に、大和の土地神であるやまとの大国魂おおくにたまのかみも宮中から外に出されました。その倭大国魂神を祭ったのがこの大和神社です。

 この倭大国魂神を宮中から外に出しただけでは災害は治まらなかったため、再び占いをしたところ、いろいろとあった結果、三輪みわやまの神様を、その子(子孫?)であるおお田田たた根子ねこにまつらせると災害はやむ、というお告げがあったということです。

 この方は、「おおた・たねこ」さんではなく、「おお・たた・ねこ」ということで、「大」は「大いなる」、「根子ねこ」は神様の称号の一つです(後に天皇に「おおやまと根子ねこ」または「日本やまと根子」という称号をつけたことがあります)。「田田たた」は、多くの「田」だとすると農耕の神様ということになります。また、「おおたた禰子ねこ」という表記もあり、この「直」だとすると「偉大な神様の直系」ということでしょうか。現在は、大田田根子命も神様として三輪神社(大神おおみわ神社)にまつられているそうです。

 崇神天皇の初期に、大和神社と三輪神社(大神神社)の祭りの起源がまとめて記されているわけです。

 大和おおやまと神社の神様も三輪神社(大神神社)の神様も大王家(現在の皇室)の祖先神ではありません。大和神社の祭神はもともとの大和の土地の神様らしい。三輪の神様は、出雲いずも大国主おおくにぬしのみこととの関係が伝えられていますが、やはり、もともとは「大和王権発祥の地」の神様でしょう。

 この大和神社は、東に参道があり、西側に社殿があります。したがって、社殿の正面が東になり、その社殿の正面が「大和王権発祥の地」のほうに向いていることになります。もしこの構造が崇神天皇のころと伝えられる時代から始まっているとすると、大和の王が山のほうからお参りに来て、西に向かって神様にお祈りをした場所、ということになるでしょう。

 もっとも、崇神天皇の時代に、最初にやまとの大国魂おおくにたまのかみが最初に移されてまつられた場所はもっと南の三輪山に近い地域だったとされます。崇神天皇の宮も三輪山のふもとにあったということですし、王家の祖先神の天照あまてらす大神おおみかみを最初にまつったのも三輪山の麓とされますから、「天照大神と倭大国魂神を宮中から外に移しておまつりした」といっても、そんなに遠方に移しておまつりした、というわけではなさそうです。

 天照大神をおまつりする場所が伊勢に移動したのと同じように、倭大国魂神をおまつりする場所もやや遠方に移動して、現在の地に落ち着いたのでしょう。

 その最初から、倭大国魂神は東から西に向かってお祈りしていたのか、そうではなかったのか。

 天照大神をおまつりしたのが三輪山の麓だとすれば、三輪山は東側になるので、西から東へ、太陽の昇る方角に向かってのお祈りだった、ということは推定できます。それに対して、倭大国魂神は西に向かってお祈りするのが当初からの姿だった、とすれば、対照的だということになるのですが。

 そうかどうかは、私にはまったくわかりません。

 大和神社は、廣瀬ひろせ大社と同じように、森に囲まれた、質素な神殿の、落ち着いた雰囲気の神社でした。

 ところで、大和神社は戦艦大和の艦内神社だったという由縁ゆかりで、大和が撃沈されたぼうみさき沖海戦の戦死者も大和神社にはまつられている、ということです。

 また、大和神社の参道の長さは大和の全長とほぼ同じという説明もありました(参道が二七〇メートルだとすると参道のほうが少し長い)。

 全長が大和と同じくらいの軍艦は、航空母艦(船体建造時は巡洋戦艦)の赤城あかぎ大鳳たいほうなどがあるのですが、大和は幅が広いのですね。四十五口径四十六センチ砲三連装砲塔という巨大なものを載せなければならないのでそうなっています(「四十五口径」は大砲の砲身の長さが四十六センチの四十五倍という意味で、二十メートルを超えます)。その幅は「参道の幅の五倍」という説明もありました。この神社の森が鉄でできていて、船になって動いて行くイメージだと考えると、やはり巨艦だと思います。

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