(四)-2

「ミサト……、じゃなくて『ミカさん』、カズ君を連れてきたわよ」

 後ろからサナさんが言った。

 ミカは俺の顔を見て力なくほほえんだ。目から透明な滴が流れて枕に落ちた。

 「カズ君……」と小さな声で言いながら、ミカは布団の隙間から手を出してきた。

 俺はベッドのそばへ寄って、彼女の手を取った。空調の効いた部屋の中で布団がかかっているにもかかわらず、彼女の手は冷たかった。

 このとき、俺はそれしかできなかった。それ以外、どうしていいのか。なんて言っていいのか。どうやって励ましたらいいのか。どういう言葉をかけるのがいいのか。


(続く)

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