第44話
長き時で退化し、知性すら失ってしまった同胞を抱えながらも支配者階級であったタマたちは自分たちの種を存続させるために様々な努力を行った。
生命維持装置を使って無限の寿命を持つタマたちが自分たちの種の寄生先として選んだのはホモ・サピエンス……何故か遺伝子レベルで猫を可愛いと思うようになっている彼らをタマたちは自身の種の寄生先として選んだのだ。
ホモ・サピエンスをこの地上の霊長にすべくタマたちが力を貸し、他の原人を全てタマたちが滅ぼし、彼らがこの世界の霊長に到れるよう様々なサポートを施した。
それより幾年が経過しただろうか?
長き時の末にホモ・サピエンスは霊長へと至り、この地上の覇者となったのだ。
世界を覆い尽くすようにその勢力範囲を広げ、文明を発達させ、いつしか植物すらも超えて地上を自身の創作物で覆い尽くすようになっていくホモ・サピエンスを見てタマたちはご満悦であった。
目論見通り長年宇宙を彷徨い続けた猫たちは地球の頂点に立ったホモ・サピエンスに保護されるペットとなり、ホモ・サピエンスを働かせて自分の餌を獲得出来る資本者階級へとなることに成功したのである。
そんな順風満帆だった猫生に陰りが一つ。
ホモ・サピエンスが抱えるようになった少子高齢化問題である。
いや、別にこの少子高齢化問題自体は大した問題じゃないのだ……そもそもこの問題を抱えているの大国であり、発展途上国では順調に人間を増やしているし、総量をたとえ減らしたとしてもそこまでの問題ではない。
問題は少子高齢化問題のその先。
大国が力を失うことによって考えられる最悪のケース。
かつては超大国としても君臨していたソ連もといロシアが力を失い、大国という座から落ちつつあった時、その衰退を止めるための最終手段として戦争という一種の外交手段として戦争を選んだように、少子高齢化で大国から落ちそうになった国がロシア同様に戦争という外交手段に頼ることを恐れたのだ。
今の戦争は昔の戦争とは違う。
核戦争の災禍で人類が滅びる可能性を否定しきれない。
タマたち……いや、僕の飼い猫という立場に甘んじていたタマを除いた猫の支配者階級がその現状を憂慮し、その対策としてダンジョンを作り上げたのである……。
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