第19話
配信者チャンネルで行われている僕と美咲さんの対談。
凄まじい視聴者数の中、僕はいつも通りリラックスした気持ちで配信に望んでいた。
「それで?この猫……タマ、だっけ?この子は何なの?」
「……さぁ?正直に言うと自分も何もわからないんですよね。この子はこの世界にダンジョンが生まれる前に拾った捨て猫なんですよね。ダンジョンが出来た後も一度もダンジョンに連れて行ったことはないですし……何なんでしょう?タマは」
「ニャー」
呑気に鳴き声を上げているタマを撫でながら僕は話す。
僕は今、僕の手元にいるこいつのことを特に何も知らなかった。僕に話せるのはタマを飼うときに気を付けた方がいいことくらいだ。
美咲さんが求めるようなことを話すことは出来ない。
「えっ……?得体のしれないものを飼っているの?」
「まぁ……そうなりますけど、僕はずっとタマを育て、一緒に暮らしてきたんです。今さら捨てることなど出来ませんよ」
「まぁ、それもそうね」
僕の言葉に美咲さんも同意してくれる。
「……本当に何もわからない?」
「わかりませんね」
「……私、日本政府にあの猫の調査をするように頼まれているのだけど……」
「多分、何もわかりませんよ?自分も散々調査して出した結論は普通の猫でしたし」
「貴方で無理なら他の誰でも無理ね……」
僕は相手を調査するスキル系統の中で最も精度の高いスキルを保有している。
美咲さんの僕で無理なら、他の誰であっても無理だという判断は実に正しい。
「私の連絡先ってもらっているよね?」
「え?……あぁ。はい。確かもらった気がします」
「……むむ。まぁ、うん。翔琉だものね」
「え?僕だからなんです?」
「いや、何でもないわ。これからタマについて何かわかったことがあれば私に逐一連絡して頂戴」
「了解しました」
僕は美咲さんの言葉に頷く。
「よし。それで良いわ。じゃあ……もう私が聞きたいことは終わりね。貴方自身について聞きたいこともあるけど、そこらへんは後で良いわ。質問コーナーあるのでしょう?せっかく私と翔琉の初めてのコラボ?みたいな感じなんだし、難しい大人な話ではなく、視聴者が求めていそうなことをしましょう」
「ありがとうございます!それじゃあ、質問コーナーに参りましょう!」
僕は今、カメラに固定しているスマホとは違う二台目のスマホを取り出した。
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