ドーパミンガール
うすしお
第一話
この話を、意識高い系のツイッターでも読むような気持ちで、温かい目で追っていただけたら幸いだ。
私は、この世の全ては地球上で群生する人間という生物の生活習慣によって決められると思っている。
恋愛関係のもつれで殺人が起こるのも、夏休みの最終日に自殺をする人が増えるのも、戦争が起こるのも、すべて人々の生活習慣が整っていないからだ。
酒の飲みすぎか、終夜逆転か、また湿度や温度が人間にとってストレスを感じるものだったのかは知らないが、そんなことで人々の感情は激しく移り変わり、あらゆるところであらゆる事件が起こるのだ。
つまり私、高校一年生の加良下加奈は何が言いたいのか。それは、生活習慣を整えれば、どんな悩み事が起ころうとも安心して生活できるということだ。
朝六時、今日も私は時刻通りに開いたカーテンから漏れる日差しで目を覚ます。
湿度、気温、明るさ、すべてを完璧に調整した私の部屋。
気持ちのいい朝。ストレスなんて一切感じない。
本棚、勉強机、クローゼットなど、すべて完璧に整理整頓された部屋。本当に、見ていてストレスなんて一切感じない。
私は着替えをてきぱきとこなし、部屋を出て一階へと降り、リビングへと向かう。
私は目元にクマのできたお母さんの暗い表情と向き合いながら、朝食を済ませる。
お母さんの暗い表情を見ながら、私はうんざりする。
まったく、お母さんはきちんとした時間に眠れているのだろうか。推奨される睡眠時間は最低でも六時間と言われている。お母さんの生活リズムを考えると、遅寝早起きという感じがする。なぜそんなストレス無限製造機みたいな生活リズムになっているのか。もしかして、眠る前にスマホでも覗いているのではないか? 流石にそれは論外だ。
テレビでは、政治家たちが馬鹿みたいな討論を繰り広げている。
中には、ぐーすかぴーすか堂々と眠っている人も。あんた、ちゃんと六時間以上寝てるの? と私は疑問になる。
お母さんは、透明性だの正確性だの~性と付く言葉をやたらめったらに使いまくる議論に、ため息をつく。なんて、みんなは生活習慣が整っていないのだろう。私までうんざりしてくるじゃないか。そもそも、朝に暗いニュースなんて見るものではない。
はあ、と私は心の中でため息をつく。みんな、生活習慣を整えれば、この世界はストレスのたまり場にはならないのだ。
そんなことを思って不満を感じつつも、血糖値は上げたくないので、これ以上何も考えないようにした。
制服を着てリュックを身に着ける。
廊下に出ると、隣の部屋のドアの前で、朝食を乗せたトレイを持ったお母さんが立っていた。
「悠斗、今日は、学校行かないの?」
悠斗とは、不登校で引きこもりのお兄ちゃん。
「……」
部屋の中の悠斗は何も言わない。お母さんは困った表情になり、悠斗の意志を汲み取る。
「そう……。朝ごはん、前に置いておくわね……」
なんてありきたりなシチュエーションだ。と私はうんざりする。不登校なんて、そうなった本人の生活習慣が悪いか、不登校になるようなことを起こした誰かの生活習慣が悪いから起こることなのだ。
私は心の中でため息を吐いて、階段を下りた。
ドーパミンガール うすしお @kop2omizu
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