第2話 「千年後の世界」
突然の話の展開に、全くついて行けない俺。
(いやいやいや!! 千年後って、俺が死んでからそんなに時が経ってるの!!)
心から叫びたい気持ちを押さえながらも、何とか話を進めていく。
「あ、『アリゴス帝国を救う』というのは、一体どういう事かな?」
「旧アリゴス王国は、イオン様を含めた英雄様の尽力の御かげで、無事に『天下統一』を成し遂げ、イオン様は『英雄』の一人として神話に語り継がれ、王国も『アリゴス帝国』へと改名されました。しかしイオン様の死後、帝国は度重なる災難に襲われ、徐々に国力を失い、今ではアリゴス帝国は壊滅の危機に立たされています。それをどうか救って頂きたいのです」
……
(ごめん。1から10まで理解出来ないんだけど……)
彼女の言っていることに、心の底からツッコミたい気持ちでいっぱいなイオンだったが、貴族らや皇女ステラの真剣な表情によって作り上げられた重たい空気が、その気持ちに歯止めをかけていた。
(ふざけて話をしている感じじゃないし…… とりあえず認識の齟齬を正していかないと……)
「千年前となると…… 君たちは間近で見てきた訳ではないだろう?」
人間の寿命は魔法を使ったとしても、精々100年も生きられない。長寿で有名なエルフ族ですら、『500歳を超えるエルフは珍しい』と言われている。
「はい。我々は、アリゴス帝国に古くから伝わる文献、『英雄神話』に記された内容から知りました。」
「英雄神話……」
王国が『英雄神話』を必死で作り上げようとしていたことは知っている。おそらくそれが原因で、俺は王国から裏切られるはめになったのだから……
「その英雄神話で、俺のことは何と書かれているのかな?」
俺は王国に裏切られた存在。『最弱の英雄』として酷く描かれる…、もしくは王国の裏切り者として描かれる可能性だってある。
ただ彼女の話を聞くに、そこまで酷くはなさそう…… むしろ偉大な人物として語っている気もする。
俺は少し緊張しながら問う。するとステラは、更に頭を深々と下げながら、
「12万の敵兵をたった一人で全滅させた人間。『王国最強の英雄、イオン・ラオーズ』として、しっかり神話に書き記されています!!」
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