76.ぎりぎりで新しい作戦に変更です
国王陛下は「妖精王様がお味方くださるなら」と許可を出されました。お母様と王妃殿下も大喜びで派手なドレスを仕立ててくれます。目立つようにですわね。ところが実行日が目前に迫ると、アレクシス様が渋い顔で難色を示されました。
「やはり囮は危険だ」
「万が一のことがあったらどうする」
お兄様と一緒になって、考え直すよう迫ります。迷って、妖精王様にご相談しました。
「というわけなんですの」
『なんとも、そなたらしい言い分だ』
この言い方は私が悪いと思ってらっしゃるのね。最初に作戦を提示した時に修正したのは、妖精王様ですのに!
『仕方ない、別の作戦を授けよう』
アレクシス様の作戦をアレンジした囮作戦を、大胆にいじった結果。まったく面影のない作戦になりました。
「頑張ります」
『作戦をきちんと理解したのか? そなたが動かぬことこそ、作戦の肝だぞ』
「ええ、理解しましたわ」
アレクシス様にご説明しましょう。おやすみなさいと挨拶をして扉を閉め、すぐに寝室へ向かいました。すると話をする前に抱きしめられ、ベッドで毛布に包まれます。
「こんなに冷えて。何をしていたんだ」
「妖精王様と作戦会議ですわ」
「次からは屋内でやりなさい。それと、必ず俺を呼ぶように」
まあ、仲間外れにしてませんのに。毛布に包まれて腕枕をされた状態で、私は妖精王様の新しい作戦をご説明しました。抜けはないはずです。最後まで聴いたあと、アレクシス様は大きく息を吐き出しました。
「囮が不要なら、その作戦で行こう」
良かったです。くしゅんと小さなくしゃみが出てしまい、慌てたアレクシス様がお風呂を用意しようと立ち上がりました。毛布の隙間から手を伸ばし、そっと裾を引っ張ります。
「アレクシス様の体温が高いので、その……温めてください」
人肌が一番いいのですよね。凍えた時に男女が温め合う記述が、恋愛小説にありましたの。思い出して告げると真っ赤な顔で「あ、うん。その……でも」と呟いて、優しく抱きしめてくれました。
眠ってしまったようで、朝、目の前にあるアレクシス様のお顔に見惚れます。傷が残っているので、世間では恐ろしい顔なのでしょう。でも前髪で隠している目元は優しいですし、傷は私を守ってくださった証拠です。怖い部分などございませんわ。何より、優しい方だと存じておりますもの。
にこにこしながら眺めていたところ、起きたアレクシス様は顔を隠してしまいました。なぜでしょう。もっと見せてくださればいいのに。
作戦変更は実行の二日前に国王陛下やエールヴァール公爵家に伝わり、大慌てで準備が整えられました。といっても、兵力や配置に大きな変更はありません。主に囮役だった私の立ち位置や言動が変わるくらいでしょうか。
海を越えるヘンスラー帝国の軍艦は、荒れる海を無理やり乗り切ったようです。見張りの塔から到着の連絡が入り、国王陛下は渋いお顔で命令を下されました。
「我が国の守護、妖精姫を守り抜け」
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