52.責任の所在はどうでもいいわ
専属侍女のエレンまで外へ追い出し、お母様は扉に内側から鍵を掛けました。アレクシス様の寝室へ繋がる扉も施錠する、念の入れようです。それからなぜかカーテンが閉められ、部屋は薄暗くなりました。手招きされてベッドに腰掛けます。
左側にお母様、右側にシベリウス侯爵夫人カミラ様がお座りになり……ああ、私知っておりますわ。この形はあれですね。令嬢同士のお泊り会で恋のお話をするときの! なぜか令嬢方は私を誘ってくださらず、誘っても丁寧にお断りされてしまったのですが。ずっと憧れておりました。
年頃の近いご令嬢達は私を遠巻きにして褒めてくださるのですが、決して近づいてくださいませんでした。以前一度理由をお尋ねしたところ「そういうところよ!」と叱られてしまいましたの。結局理由は分からないままで……。
がしっとお母様の手が私の手首を握ります。目を覗き込むように首を傾げ、髪形が崩れるのも気にせず話し始めました。
「神様の鳥って……分かってて使った表現よね?」
「はい。愛し合う男女が同じベッドで一夜を過ごせば、神様が時期を見てお子を授けてくださると」
「……本気?」
カミラ様の目がぎらぎらと光って怖いです。何かおかしなことを言ったでしょうか。お二人の顔を交互に見つめる私に、お母様が大きく溜め息を吐きました。
「どうしましょう、本当に何も知らないなんて。てっきりカミラが話したと思っていたのよ?」
「あら、家族でもない私が教育するのはおかしいでしょう? イーリスがきちんとしなかったから悪いの」
カミラ様とお母様が言い争いを始めました。私が原因のようですが、理由が分かりません。ひとまず止めた方がいいのかしら。気が済むまで言い合った方が??
「責任の所在はどうでもいいわ。王妃殿下も何も教えておられないようですし……」
「そうね。王妃殿下が親しくされていたから安心していたわ」
なぜか王妃殿下が悪いという見解で一致したようです。
「ヴィー、よくお聞きなさい。神様の鳥はいないのよ。赤子は旦那様になる殿方に授けていただくの」
「神様の鳥は、アレクシス様がなさるのですか?」
お母様はぐしゃりと髪を乱して「ああ! もう!!」と声を荒らげました。その様子を見て、カミラ様が応援の説明に入ります。
「一晩レードルンド辺境伯閣下と過ごしたのよね? なら何をしたか覚えているでしょう」
詳しく話してご覧なさいと言われ、少し迷いました。アレクシス様に、夜の寝室での話はしないよう言われています。
「母親相手に秘密は作ってはダメよ。正直に全部話すの」
お母様が畳みかけたので、もしアレクシス様に叱られそうになったら「お母様のせい」とご説明しましょう。私の両手首をお母様ががっちり握り、肩を抱き寄せるように距離を詰めたカミラ様に拘束され、逃げ場もなく頷きました。
「カミラ様に教えていただいた通り、レースの薄着で窓から侵入して一晩一緒のベッドで眠りましたわ。この時告白を忘れてしまって、順番が間違っていましたわ。でも二度目の時にアレクシス様が許して下さって……ふふっ、朝までぐっすり」
今になれば懐かしいですわ。
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