51.神様の鳥っていつ頃来られるかご存じ?
侯爵夫人はお母様と一緒に到着されました。驚きましたが、エレンがすぐにお茶菓子の追加を頼んでくれたので、何とかなりそうです。お庭に用意してもらったのは、薄布を使ったテントでした。簡易のものですが、日陰を作っているのに暗くなくていいですね。それに風も通るので、涼しく過ごせそうです。
淑女のドレスはとても美しくて素敵ですが、重いですし夏に暑いのが難点でしたから。涼しい風が入るこのテントは、裾や天井に装飾を施したら流行するかも知れません。
「素敵なお庭ね」
「ありがとうございます。シベリウス侯爵夫人」
「あらいやだ、前にも言ったでしょう? ロヴィーサは娘も同然、カミラと呼んで。それより恐ろしい目に遭ったと聞いたわ。もう平気なのですか」
「はい、カミラ様。ご心配ありがとうございます」
笑顔で応じながら、三人で円卓を囲む。四角いテーブルにしてなくて良かったです。円卓なら順位が付きませんから。お母様とカミラ様の場合、どうしても公爵夫人であるお母様の方が上座になるのです。でもお友達に順位を付けるのは失礼だと、お母様はいつも円卓を利用していました。
正確には円卓でも座席に順位はあるそうですが、王族との会食でもなければ関係ないそうです。そのため私もいつものお茶会のつもりで、円卓を用意してくれるよう頼みました。
「このテントは辺境伯家が普段からお使いなのかしら」
「アレクシス様が戦場でよく利用されるそうですわ。未使用の新品をお借りしましたの」
虫よけに使うと聞きました。円形のテントの天井は帆布で透けませんが、そこから足元まで覆う壁部分は細かな網の薄布を巻いています。傭兵の方々が設置してくれました。そんな雑談から始まったお話は、徐々に核心へ向かって進みます。
「それで、ヴィーはもう……その、したの?」
した……ああ、夜這いのことですね。にっこり笑って頷きました。
「まぁ! 一緒に夜を過ごしたのね?」
「はい、その後も時々一緒に寝ておりますわ」
「あらぁ!」
感嘆の声がテントの外まで届くのか、時折エレンが動こうとしますが首を横に振りました。お茶が必要な時は呼びますわ。
「カミラ様、私……夜這いのお作法を間違えてしまいましたの。実は告白する前にお部屋に侵入して、飛び付いたのです。でもアレクシス様は許してくださって」
「っ! そうなのね。きっとロヴィーサがいい子だからよ」
せっかく教えていただきましたのに、申し訳ないことです。それと、大切なことをお尋ねしたかったのです。お母様もおられますし、ちょうどいい機会ですわ。
「あの……それで、神様の鳥っていつ頃来られるのかしら。私まったく分からなくて、出来たら結婚式後にお願いしたいのですが……どう伝えればいいのか困っておりますの」
「「はい??」」
お母様とカミラ様が同時に首を傾げ、互いの顔を見てから私を凝視しました。
「いろいろ聞きたいことがあるわ。そう、夜の話とかいろいろと」
いろいろを二度口にされましたが、そんなにたくさんお話があるのですか? カミラ様。お母様もそんなドラゴンにひっぱたかれたような顔をなさって。
詳しいお話は外に漏れるといけませんので、人払いをした私の私室へ移動することになりました。折角テントを用意していただいたのに、半刻も使用しませんでしたわ。
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