第19話

「──え? ど、どういうこと?」


「だから、私が未来の復讐に協力してあげる。未来の危険予知能力と私のペテンがあれば無敵だと思うし」


 利子からの申し出は未来にとって予想外であった。


 未来にとってはメリットしかない話だが、利子にとってその提案は一切の利益がないのだ。


「利子にとってあたしに協力するメリットは何?」


 未来にとってその答えを聞く必要があるのだ。なぜなら、未来も知っている。上手い話には裏があると。


 この提案は不自然以外のなにものでもない。利子の思惑を知った上で判断したいと思っているのだろう。


「……メリットかぁ~、うーんなんだろう、面白そうだから?」


「……は?」


「私はさ、借金を背負ってるんだけど、それが返済できればそれだけでいいの。でもね、それが終わると私には──何もないの」


「何もない?」


「うん。何も。やりたいことも、なりたいものもない」


「だからあたしに協力する? それだけの理由でいいの?」


 未来の問いかけに、利子は一切の迷いもなくこう答えるのだ。


「いいよ。私は未来のパートナーだから」


「……」


 再三違和感を覚えたその言葉が、今は信用に値する言葉にしか聞こえない。どの道未来には利子を疑っていてもそれを暴く術がない。


 今は利子の言葉を信じるしかない。そう思い、利子を見据えて言葉を紡ぐ。


「利子……お願い、あたしに力を貸して」


「お願いされたよ」


 未来の懇願に利子はニッコリ笑みを浮かべそれを了承した。


 今ここに、未来と利子にはゲームで生き残る以外の目的ができたのだ。


「さあて、じゃあお互いのことをもっと知るためにやらなくてはいけないことがある」


 利子は唐突に両手の指を絡めながら、中腰になり、重い面持ちで告げる。


「な、なんだよ……?」


「それは……」


「それは……?」

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