第17話
「と、まぁ、こんな感じなんだけど……」
未来は自身の過去を打ち明けたのだが、打ち明けられた当人が予想外のリアクションを見せたことに未来は驚きを隠せずにいる。
「……ぐすっ、づ、づらがっだね。よく一人で頑張ってきだね」
利子は大号泣であった。
「なんであんたが泣いてんだよ」
「だっで、だっでー。ぐすっ」
利子の目も当てられない姿に、未来はスカートのポケットからハンカチを出し、利子の顔に優しく触れる。
「全く、頼もしいんだか、情けないんだか本当によくわからない奴ね」
「……ありがとう。じゅるじゅる……」
お礼を言いつつ利子は未来のハンカチに鼻水をぶちまけた。それを未来はドン引きしながらそのハンカチを眺めていた。
「じゃあ、未来の復讐の相手はその詐欺グループのリーダーの人ってこと?」
「うん。だけど、もう一つあるんだ。それは……この運営を潰す」
未来は両親を奪い去ったこのゲーム、そしてそのゲームを運営している人間を潰すことも目標としてこのゲームに参加していたのだ。
「ふーん……運営を潰すね~」
「何? 馬鹿にしてるの?」
「いやー……でも、無理でしょ」
利子の一言に未来の沸点が到達し、利子に言い寄る。
「あんたね!」
だが、未来に先の言葉を出させないように利子が遮り。
「だって、未来は危険なものがわかるだけで、駆け引きは全然ダメだもん」
「駆け引き何て必要ない。あたしの土俵に立たせればあんただって」
「なら、やってみる?」
そう言う利子の顔付きが変わった。
先程の頼りなく情けない顔は消え去り、真剣な形相へと変わっていた。
未来はその勝負を受けることにする。
「勝負は単純明快、私が二枚のカードを見せるから、一枚はジョーカー、もう一枚は普通のカード。未来は私からジョーカーではない方を引いたら勝ち、どう? ちゃんと未来の土俵でしょ?」
「あんたね、舐めるのも大概にしてよ」
未来はあまりのバカにされ方に腸が煮えくり返る思いを堪えきれず、利子を罵倒する。
これは自分の土俵でなくとも勝つ確率は五分だ。さらに自分のこの体質を使えば百パーセント勝てる。これは何かの罠なのかとも思ったが、未来はそこまで考えて、思考を停止させた。
結局のところ、利子が何をしようとも未来の勝ちは揺らがないと判断したからだ。
利子は未来からの罵倒に耳を傾けず、部屋の引き出しからトランプを用意していた。
「ここに来る途中でもらっておいてよかった。じゃあ行くよ」
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