第16話
未来が裏の世界に足を踏み入れて早一年が過ぎた日のことだ。
ようやく未来は両親が背負った借金、二千五百万を完済する日が訪れたのだ。
一年と早く聞こえるかもしれないが、未来にとっては想像を絶する辛い日々だった。
幾ら危険を察知できたとしても、絶対に捕まらない保証はどこにも無い中、自宅に戻れば自分より幼い弟と妹の世話をして、勿論高校は中退。普通の女の子が送る青春という名の二文字を未来は味わうことができなかった。
それもようやく今日で終わりだ。今日を乗り越えればやっと自分も普通の生活が送れる。そう思っていた未来の元に厄災が降り注いだ。
いつものグループの部屋に足を運ばせた未来。
都内に建つ高層マンションの一部屋に入ろうとドアを開けた瞬間、未来の嗅覚が過剰に反応した。
──この部屋は危険だ。
未来が気付いた時には最早手遅れだった。
マンションの部屋の中には警察が控えており、部屋の中には、未来と警察官しか居なかった。他のメンバーはどこに行ったのか全くわからない。
その日、未来は警察に捕まり少年院に収監されることになったのだ。
だが、未来に降り注いだ厄災はまだ序章に過ぎなかった。
少年院に収監された未来は思いの外あっさりと釈放されたのだ。それはグループの組織が保釈金を支払い、未来は保護観察付きで釈放されることとなった。
そして未来はグループの大元に呼び出され、とある事務所に足を運ばせた。
その事務所には一人の男がソファーに腰を掛け、その周りに複数の側近たちが控えていた。
「釈放させていただいてありがとうございます。ですが、申し訳ありません。最初に契約していた、借金の返済が完了するので、本日を以て足を引かせてもらいます」
それを聞いた側近の男が怒鳴りつける様に未来に迫る。
「手前! 釈放させてもらって何の義理もなくやめるだと⁉ 舐めてんのも大概にしろよ」
だが、その男に対しても未来は怯むことなく言葉を紡ぐ。
「それはそうですが、契約は契約です」
その言葉にグループのリーダーは不敵に笑って。
「未来ちゃん、……本当に完済したと思っているのかな?」
「何が言いたいんです?」
「君が今まで払っていた借金は君の両親が払うはずだった金額の利子だ。つまり、君の借金はまだ、一円も減っていない。それに、今回君を釈放させるにあたって保釈金五百万円をこっちは払っているんだ。これで君の借金総額は三千万になったんだよ?」
「……そんな、嘘だ……」
そう──。
未来が今までしてきたことは全部無駄に終わったのだ。それは未来には例えようも出来ない絶望が注がれていた。
最早、生きていることにも嫌気がさしていた。そんな未来にグループのリーダーはこう告げる。
「それなら君に良い場所を教えよう。君の人生を変えるきっかけになるかもしれない」
そこで告げられたのが「DEAD OR ALIVE」だったのだ。
未来はその次に出てきた言葉で全てが繋がることとなる。
「君のお父さんとお母さんが挑み、そして……敗れた場所でもあるけどね」
「⁉」
未来はその一言で理解したのだ。自分の両親を陥れ、両親を殺したも同然の黒幕の正体は自身が所属していた詐欺グループのリーダーだったのだ。
未来は誓った。両親が挑み敗れたゲームに自分も挑み、必ず生き残ってこいつに復讐するのだと……。
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