第14話意外な素顔
「DEAD OR ALIVE」会場船内
ゲームの残り時間が零になり、最初の犠牲者である飯島流星が会場から姿を消して二十分程経過していた。
他の参加者は飯島流星の死を目の当たりにして、次は自分の番なのではないかと気が気ではない心境に陥っていた。
方や恐怖に駆られている者も居れば、今なお同じ場所に居るにも関わらず一人の美少女のきめ細やかな白い膝の上でスヤスヤと寝息を立てている者も居た。
その寝顔を愛おしそうに眺める茶髪がかった黒髪に大きな瞳をした美少女。先程白戸利子にゲーム終了時点までの永久的な隷属を嵌められるような形で取り付けられた水瀬未来だ。
その未来の膝の上でスヤスヤと安心しきって眠りに就いているのは、先程一時は自身の「死」が目前まで迫り、見事そこから逆転勝利を収めた今となっては未来の主人にあたる綺麗な黒いロングヘアの黒縁眼鏡をかけた美少女、白戸利子だ。
利子と未来の空間だけはこの殺伐とした雰囲気とは真逆のどこか微笑ましい光景がそこにはあった。
だが、そんな甘い時間は長くは続くわけが無く、利子は新たな人の気配を感じ取りすぐさま起き上がる。
「私の気配に気付きましたか、流石の警戒心ですね」
「⁉」
今まで起きていた未来には突然聞こえてきた声に驚き、声のする方に視線を向けるとそこには音もなく利子たちのいるゲーム会場に足を運ばせていたユキネがいた。
「皆様、第一ゲーム「決闘」終了です。見事勝者を収めました皆様には報酬として百万ポイントが支給されます。なお、本日のゲームは全て終了ですので案内された自室にておくつろぎ下さい」
ユキネは説明を終えるとその場を後にする。ユキネの姿がなくなると同時に参加者から緊張感が解れていくのがわかる。
だが、逆に言えばこうも言える。
取り敢えずその場は凌げたと。
次のゲームが終わる頃には果たして自分はこの場に入れるのかわからない。けれど、今はこの幸せを噛み締めようと全員がそう思っていた。
暫くして利子は案内された自室になる客室に連れられていた。
部屋を見渡せば、キングサイズのベッドに利子が住んでいたボロアパートよりも広い空間に利子は感動していた。
「え⁉ ここに寝泊まりしていいんですか?」
「……はい。構いません」
案内役の男は端的にそう告げる。
利子はほんの僅かな間、自分が貴族にでもなったかのように自室で貴族ごっこをしていた。
ワイングラスに水を入れ、バスローブに身を包み窓の外を見ても辺り一面海原なのにも関わらず一人優雅に呟いていた。
「ルネッサーン…………ス」
グラスを頭上に持ち上げて叫びながら、ガラスに映る人影が目に入りその瞬間利子の顔面がボンっと音がするくらいの勢いで真っ赤に染め上がっていた。
「……あんた、何やってんの……?」
「あはは……」
未来の問いかけに利子はそう言うや、瞬間移動でもしたのかと思える速さでベッドの脇に入り蹲っていた。
その行いに溜息を吐きながら未来は後を追い、その利子の姿に思わず悲鳴をあげる。
「ひっ⁉」
「死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい」
「利子? 大丈夫?」
「恥ずかしすぎて死にそう……」
最早半泣き状態の利子は体育座りをしたまま動かない。
だが、利子はそこで平常心に戻ったのか、未来に問いかける。
「それよりもどうしたの? というか何で私の部屋がわかったの?」
「あんたの後を付いて行ったからだよ。ったく、勘が鋭いんだか鈍いんだか」
「あー、完全にオフモードになってたからかな、私に何か用?」
「用って訳じゃないんだけど、なんだか、怖くてさ……」
未来の意見はもっともだ。今は憩いの時間を過ごせているのかもしれないが、また無慈悲なアナウンスが鳴り響けば殺し合いが始まるのだ。
寧ろこの状況でくつろいでいられる利子が異常なのである。
利子もそれに気付き、未来に提案する。
「それなら、私の部屋で寝る?」
「え? いいの?」
「大丈夫だよ! それに、私もパートナーに対して気遣いができてなかったね。ごめん」
「…………」
未来はその言葉に戸惑う。
パートナー。確かに今の利子からは何も不安や恐怖の匂いはしない。けれど、一度ゲームに本気になった利子からは危険な匂いしかしなかった。
未来には理解ができずにいた。
──彼女は一体、どれが本物の白戸利子なのかと。
「……未来? おーい、未来さーん」
「え⁉ あ、何?」
「未来はさ、何でこのゲームに参加したの?」
利子の言葉にまたしても黙り込む未来。
けれど、今の未来になら話してもいいと思い、自身の目的を語りだす。
「あたしには復讐しなきゃならない奴がいる……」
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