第12話
音の無いモニター越しに一人の少女は驚きと期待に満ちていた。
その少女は茶髪がかった黒髪に制服にパーカーを着ている美少女、水瀬未来だ。
自分の予想に間違いはなかった。あれは怪物だ。最初はあの男の方にしようと思っていた。何故なら──男の方が幾分か楽だからだ。
けれど、私は彼女に賭けた。彼女とならきっと生き残れると。
後は彼女を言いくるめられればそれで全てが上手くいく。
この常に緊張感が漂う場で同い年、そして同性のプレイヤーの存在がどれだけ緊張を解してくれるだろうか、未来は最初に利子を見つけた瞬間に彼女を取り入れようと決めていた。
だから、敢えて彼女を心配し、味方で居る様に振る舞ったのだ。
この会場で唯一自分の味方をしてくれる存在、これに頼らない人間など普通はあり得ない。未来は最初から利子を自分の手中に収める様に動いていたのだ。
何もこのゲーム、ゲームだけが全てではない。その前に入る過程こそ自信が生き残る絶対の鍵だと未来は考えていた。男が相手なら自身の女子高生という立場を使って誘惑し手駒に加えることは容易だが、男を相手にする場合、予想外なことが起きる可能性が危惧されるのだ。それは──性欲だ。男が力を行使してきたら流石に逃れるすべはない。それらを考慮して、白戸利子は未来にとって打って付けの存在なのだ。
後は見事逆転勝利を収めた白戸利子に笑顔を向けて迎え入れれば、極限の緊張感から解放されて流石の彼女も気を緩めるだろう。
そしてゲーム部屋の扉が開き、遠くから白戸利子の姿が見えた。制服姿に長い黒髪を水色のシュシュで結んだ黒縁眼鏡をかけた美少女。
未来は即座に笑顔に表情を変え、利子の元に駆けよる。
「あんた! 本当にすごいよ! まさかあそこで逆転するなんて思ってもなかった!」
「だから言っただろ? 負けるつもりはないと。まあ何はともあれ、取り敢えず勝利を喜ぶとしますか」
そう言い放った利子は左手を上に掲げハイタッチを要求する仕草を取る。それを見て未来は完全に気が緩んでると判断してそれに応じた──。
「おめでとう!」
「あぁ、ありがとう。そして……お疲れ様」
「っ⁉」
未来は手を合わせた時、何かその手に触れた不快な感触があり、咄嗟にその手を放し、掌に視線を移す。
未来の右手の人差し指には赤い朱肉の跡が付いていたのだ。
「……え、あんた、これ……、何?」
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