第5話決闘<デュエル>
「DEAD OR ALIVE」会場船内。
そこに一つのテーブルに相対している二つの影がある。
「……おい、これ……、どういうことだよ⁉」
一人の男が肩をわななかせながら怒りと驚きを露わにしている。
「ん? まだ分かんないの? まあ、勝負も──あんたの「人生」も終わったことだし種明かししてもいいけど……聞く?」
そこには不敵な笑みを浮かべながら、へらへらと相手を挑発するようにしている影があった。
一時間程前。
「DEAD OR ALIVE」会場船内。
船内にゲーム開始のアナウンスが鳴り響き、再びユキネの姿が現れる。
ユキネの登場に皆の視線が集まる。
「皆様お待たせいたしました。これより第一ゲームを開始します。第一ゲームは「
ユキネの言葉が終わると同時に利子を連れ出した黒装束の男等が会場内にいる全員からデバイスを回収し、その後すぐに返還された。
「こちらのデバイスには皆様のポイントが入っております。これから色々なことに使用されます故、厳重に保管、使用してください」
そのデバイスを受け取ると、そこには利子の名前と所持ポイント百万ポイントが記されていた。
更にユキネはゲームの詳細を語る。
「このゲームではプレイヤー同士の一対一でゲームをしてもらいます」
ルールは以下の通り。
1・全プレイヤー所持金額百万ポイントからスタートとする。
2・掛け金は互いの合意の元、定めるとする。
3・2が適用される限り掛け金の上限は存在しない。但し一度の勝負で最低十万ポイントを賭けることとする。
4・ゲーム中の不正発覚は直ちに敗北と処す。
5・ありとあらゆることにポイントは有効。
6・制限時間は三時間。
7・制限時間到達時に所持ポイントの一番低い者が敗者となる。
8・勝負内容は船内にあるもの全てが活用できる。
9・勝負の合図はゲーム会場に設置されている機会にデバイスをかざすこと。
──以上が今回のルールとなるとユキネは告げる。
皆が一様に考え込んでいる中、利子だけは終始デバイスに文字を打ち込んでいた。
なるほど……一人だけが勝ち残るバトルロワイアルを想定していたのだが、これは思いの外楽勝かもしれないなと利子は思い──やめた。
これは自分の本当の命が掛かっている。楽観視は気が緩んでもするものではないと。それに恐らく──普通の人間が呼ばれているとはとても思えないのだから。
仮に、利子が主催者側なら、ただの借金を背負っている人間をゲームに参加させたとしても盛り上がりに欠けると思っているからだ。
ゲームとは、高揚、焦燥、歓喜、怒り、悲しみ、憎しみとあらゆる感情が要り狂うものなのだから、それをいわば素人にやらせてもそれは面白味に欠けるのだ。
まあ、各国のVIPが弱者が
「それでは第一ゲーム開始!」
ユキネの宣言を以て、少なからず最低一人は犠牲者を出すデスゲームが始まりを告げるのであった。
「DEAD OR ALIVE」会場内管制室。
先程ゲーム開始の合図をしたユキネが戻ってきたところに声をかける者が居た。
「あ、先輩お疲れ様です」
「あら、早かったわね。そっちのグループはどう? クルミ」
「うーん、第一印象はみんな変わらないですね~。でも……ゲームが始まれば面白い子が出てくるかもですね」
そう言うユキネと同じ場所に居るクルミと呼ばれる人物。利子と未来と同い年くらいに見える少女、髪は茶色がかった黒髪がふわりと肩位の高さまで伸びており、男を虜にしそうなニヒルな唇を持ち合わした美少女だ。
「そうね、それはどこのグループも変わらないでしょうね。私のグループもゲームが始まって動きは──っ⁉」
「どうしたんですか先輩?」
ユキネの驚きぶりにクルミも画面に視線を移すと、そこにはユキネの予想を覆す光景が映し出されていた。
「……えー、先輩、これって、まさかとは思うんですけど……」
「えぇ、そのまさかよ。ある意味肝が据わっているのか、それともただのバカなのか……」
ユキネとクルミの目の前にはユキネの担当するグループの順位表のようなものが映し出されているのだが、ユキネはおそらく早くても一時間後にゲームが動き出すと予想していた。だが、まだゲーム開始三十分で今にも所持ポイントが底を尽きそうになっているプレイヤーが居たのだ。
そのプレイヤーとは──白戸利子だ。
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