ダンジョン学入門

水城みつは

井戸の底のダンジョン

 その井戸の底には砂漠が広がっていた。

「森の中の井戸の底が砂漠型のダンジョンって……」

砂漠の井戸の底に森林型ダンジョンであれば役立ちそうでもあるが、逆だとなんだかとっても無駄な気がする。

「ほら、愚痴ってないでとっととダンジョンコアを探すぞ」

そう言って先生はサクサクと魔道具を砂に刺していく。

僕も索敵魔法を広げていくが、魔物の気配すら全くない。


「魔力の流れ的にはあっちか……」

砂に足をとられつつ、ダンジョンコアがあるであろう方向に向かう。


フィールド型のダンジョンは基本的に1層のみの構成となる。

いわゆる、遺跡的なダンジョンの場合は複数層になり、また、ダンジョンの成長と共に階層が深くなる。

フィールド型の場合は成長によって面積が広くなるものの、その広さはせいぜい10キロメートル四方までだ。

ただし、空間的にループするらしく延々と迷う可能性もある。

このようなダンジョンの特性について学ぶのがダンジョン学であり、僕はそのうちのダンジョン発生学についての研究室に属している。

今回も研究のために各地の未発見ダンジョンを探索しているのだ。


「先生、向こうに薄っすら魔力反応があります」

索敵魔法に何かがひっかかった。


「干上がったオアシス跡だな」

しばらく歩くと砂丘の影に岩場があった。

オアシスだったと思しき窪みの底に人の頭ほどの大きさの黒い球体が転がっている。

先生は拾い上げた球体を光に透かしてながら言った。

「朽ちたダンジョンコアだな。環境に適さなかったんだろう」

ダンジョンの特性が周囲の環境と合わなかった時、ダンジョンが成長せず消滅する場合がある。

それ故、ダンジョンは魔物であるとする学説もあるくらいだ。


「先生、これは?」

足元からクルミの実のような透明な物体を拾い上げた。

「おお、それがダンジョンシードだよ」

今回の探索の目的であるダンジョンシードは光を受けてキラリと輝いた。







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ダンジョン学入門 水城みつは @mituha

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