キャラ紹介
クシャナをあんまりかまいすぎると恥ずかしがって〔ログアウト〕しかねないから、ミナルーシュはほどほどにして話題を切り替える。
「で、ルゥジゥは結局〔
「当然。琵琶を弾けるからって誘ったのはミナの方でしょ」
ミナルーシュと呼ぶのも面倒になったのか、ルゥジゥは勝手に名前を縮めて友人に応えた。
「ま、あんたはそうよね。〔奏者〕ってなにができるの?」
「〔楽譜〕っていう〔アイテム〕に対して〔採譜〕という〔スキル〕で〔魔術〕を込められるんだけど、その〔楽譜〕を〔演奏〕すると〔魔術〕が使えるらしいよ」
〔詠唱〕によって〔魔術〕が発動するのが基本の
ミナルーシュはルゥジゥの説明と琵琶の音を聞いて、ほんほんと頷いた後にクシャナにも水を向けた。
「んで、クシャナは? どんな〔ルーツ〕選んだの?」
「え、あ、うん。〔魔女〕を選んだ。子供を妊娠出来るってあったから」
「……ほわっつ?」
クシャナが〔魔女〕を選んだのは〔魔女の外套〕から予想出来ていたミナルーシュだったけれど、その理由は予想外過ぎて訊き返してしまった。
クシャナはおずおずとさらに説明を重ねてくれる。
「えっと、〔魔女の
「ゲームでプレイヤー孕ませるとか、運営にはキチガイでも混じってんの? それ、男アヴァターだったらどうなんのさ」
〔魔女〕に用意されていた〔スキル〕の内容が余りにも奇抜過ぎて、今度はルゥジゥがツッコミを入れる。
「オメガバースるんじゃね?」
「それはそれでクシャナの夢が叶っちゃいそうだね」
親友二人のあけすけな物言いにクシャナは少しいたたまれなくなる。
「だって……子供は生みたいもん」
クシャナがしょんぼりと肩を落とすと、ミナルーシュとルゥジゥはお互いの顔を見合わせてからぎこちなく笑い合った。
「おけ。クシャナが幸せになれるなら、なんでもいいわ」
「クシャナにとって理想の体が全部実現したってことだね。いいんじゃない?」
友人二人に受け入れてもらえてクシャナはあからさまにほっとした雰囲気をかもしだす。顔はフードに隠れて見えないけれど、はにかんでいる様子が分かるくらいだ。
「えーと、クシャナ? それで〔魔女〕の他のスキルとか高い能力値ってなに?」
「んと、〔薬草知識〕っていうのと、〔魔女の髪〕。〔魔女の髪〕は夜の闇を髪が吸って〔MP〕を溜めるんだって。能力値は〔呪縛〕にポイント全部振って25にしたよ」
「この〔魔女〕さん、呪いが得意なんか」
〔薬草知識〕は聞いたまま〔薬草〕に関する情報を得られるんだろう。〔魔女の髪〕で追加〔MP〕があるのも〔魔術〕が中心になるRPOで無駄になるわけがない。
「ちなみに私の能力値はこんなだよ」
ルゥジゥは琵琶を弾く撥で器用にシステムメニューを操作して、自分のステータスを二人に表示した。
『ルゥジゥ
〔破壊〕1
〔妨害〕12
〔治癒〕20
〔祝福〕25
〔呪縛〕12
〔創造〕1
〔HP〕70
〔MP〕140』
ミナルーシュは表示されたステータスにざっと目を通すと訳知り顔で頷きを繰り返す。
「典型的な回復・強化重視のステね。ま、後ろで琵琶引いて援護よろしくって感じ?」
「元からそれしかしないつもりだから大丈夫だよ」
プレイスタイルにステータスが噛み合っているんだからゲーム的には問題ない。ただルゥジゥの物言いがアレなだけで。
「あ、そんなことできるんだ」
「システムメニュー開いて、ステータス画面出したら長押しで表示選択出るよ」
「え、と……これか」
ルゥジゥから説明された通りにクシャナも自分のステータスを表示してみた。
『クシャナ
〔破壊〕11
〔妨害〕11
〔治癒〕11
〔祝福〕2
〔呪縛〕25
〔創造〕12
〔HP〕70
〔MP〕130』
ポイントを全振りした〔呪縛〕が突出しているけれど、〔魔女〕は〔奏者〕よりもバランスの取れたステータス分配になっているようだ。
「あたしは〔魔術師〕を選んだよ。ステータスはこれ」
続けてミナルーシュも自分の〔ルーツ〕を伝えてステータスも表示した。
『ミナルーシュ
〔破壊〕14
〔妨害〕10
〔治癒〕10
〔祝福〕18
〔呪縛〕10
〔創造〕10
〔HP〕100
〔MP〕150』
ミナルーシュが〔魔術師〕を選んだと聞いたルゥジゥは不審そうに目を細めた。
「〔魔術師〕って一番基礎の〔ルーツ〕じゃなかった? もっと手の込んだの選ばなかったの?」
「いやー、三人パーティで一人は後衛なの分かり切ってたし、一人はゲームどころかVRにも慣れてなくてなにを選ぶか分からんし、マルチな動きが出来るシンプルスタンダードが正義だったんだよ」
今回のミナルーシュの役目としては、どんな事態に遭っても対処をして二人を守るのが一番の優先だ。
後々、成長させていくに当たっても、クシャナやルゥジゥの傾向を見て足りないところを埋めていくのにも、最初は癖のないデータ構成が良かった。
「これ、なんで〔祝福〕にポイント振ってるの? ルゥジゥが強化してくれるって、前から話してたよね?」
「ああ、それ? それはね、ちょっと説明が難しいから実際の戦闘で見せてあげるよ」
質問に明確な答えが返ってこなくて、クシャナはこてんと首を傾けた。
その仕草が可愛くて、ミナルーシュはなにも考えずにフードの上からクシャナの頭を撫でる。するとクシャナはくすぐったそうに、けれど気持ち良さそうに声を漏らす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます