第16話 美崎ちゃんのお願い。ちょと無茶振りすぎるよ!……でも仕方ないなぁ。
画面が閃光に包まれ、その後に物凄い衝撃が来て、わたし達は吹き飛ばされた。
機体に沢山の何かが当たって、機体が不規則に衝撃を受け回転している。
が、美崎ちゃんはあっという間に姿勢を安定させ体勢を取り戻すと、物凄い加速で移動を始めた。
「綾。慣性消去装置は付いてるけど、激しく動くから一応気をつけて」
美崎ちゃんが厳しい声。
「何があったの、爆発? 機体に当たってるの破片だよね!」
と、目の前の画面に沢山のテンプレ機のアイコンが出て、その全てに赤い×がついた。
「え、これどゆこと!」
「ん、みんな撃墜」
・・・・・・
「え、みんな死んじゃったの?ペイント弾みたいなので戦うんじゃないの?」
「違う。実戦」
VRでは誰も死ななかったし、皆そういうものだと思い込んでた。
「あたしらは理解してたさ!糞ネズミ野郎!」
「これは実戦との指摘は止められてたアル。報道の人も含めて」
「……」
「エミリーちゃんも、
「は! あれくらいでやられるかい!」
「予想してたアル……予想より凄かったアルけど」
「実戦……だから手加減とか言ってたんだ。みんな優しいね」
あれほど沢山いた、機体が一機もない。
わたしはパニックだよ。
爆発の中央にはロシアのオリジナル機、ひと回り小さくなってる。アリナちゃんの銀色の球形の機体が浮かんでいる。
「アリナちゃんがやったの」
と言うと右下にアイコンが出て、中央から円状に残骸? が吹き飛ばされてるのが表示された。
「ん、彼女が中央で大型反物質爆弾を炸裂させた。最初は密集してるからそれ狙い」
なにかしら操作して美崎ちゃんが硬い声で答えをくれた。
「一番上の外装は爆発で破片を撒き散らす構造だ。対人爆弾と同じだ! 糞! えげつない!」
「防御に振ってる機体とは予想してたけど、初手で手加減無しの反物質爆弾までは予測しきれなかったアル」
「おおーとっ! 初手に大型反物質爆弾起爆だーー! ロシア、頑丈さに振った機体には傷一つない! さすが我らが軍事同盟、
白ネズミさんが自惑星向け放送に向けて解説してるけど、何か上から目線でいやんだね。
「さぁて、これから乱戦! まず狙うは弱者! 誰が一番弱いかなー!」
右上のTV放送画面で白ネズミさんのアップ。
「ん、あの糞ネズミ!」
白ネズミさんの言葉と同時に美崎ちゃんが急加速、上下左右の移動もなんか凄いよ。
「ん。糞ネズミ、一分だけ機体内の通話をOFF」
「仕掛けますか、仕掛けるんですねぇ。おkです。一分ですよ!視聴者は煩いですからねぇ! さん、ハイ!」
どうやら作戦会議らしいよ。四人の通信は一時OFFみたい。
「どゆこと、美崎ちゃん」
「ん、スペック上一番弱いのは私達。集中攻撃が来る」
「えええええええええええええええ!」
「綾、大声出しても現状は変わらない」
「み、美崎ちゃんが冷静すぎるだけだよ」
「大丈夫、綾が居れば、絶対負けない、今からこの機体の操作を渡す」
「へ、何言ってるの美崎ちゃん?」
と、わたしの視界が一変した。
小学校の体育館?
いやー、懐かしいよ。
「じゃない!」
体を見ると、わたしも懐かしの名前入り体操服だよ。体格まで昔通り。
「どうなってるの! 小学校の時の体育館。懐かしいけど、どゆこと!」
「ん、脳波操縦にVR操縦を付け足した。この機体は今は綾の体そのもの。違和感無いよう操作出来るプログラムを組んだ」
「ええー!」
凄すぎるよ、美崎ちゃん!
「ん、敵のレーザーやミサイルはボールに見えるように設定してある、回避して。
その間に私が彼らを叩く」
「回避? 避ければ良いの?」
「ん、デコイ役お願い」
「この機体は
「ん」
「ん、わたしは格闘は強いけど、射撃はそれほどでもない。大きさも重要な要素。確実性を取った」
デコイでもVR戦闘で圧勝してたけど、その辺はテンプレ機相手だったからかな。
「ん、来た、回避お願い。
美崎ちゃんにお願いされ、わたしは覚悟を決めた。実戦だね。死にたくないよ、死体も見えないから、全く、実感ないけど。
美崎ちゃんが大丈夫と太鼓判押すなら出来ない訳もなし! 死ぬわけもなし!
「よーし、ドッチボールで逃げの綾と呼ばれたこの技術! 見せてあげましょう!」
わたしは懐かしの小学校の体育館に見える映像の中で両手を挙げ気合を入れた。
「ん、綾、素敵! 無茶素敵! 愛してる!」
混乱してるのか、美崎ちゃんが妙な事を言ってる。
視界にちょとの間、小学校の頃の美崎ちゃんの映像が現れ応援してくれた。
うん、頑張るよ、美崎ちゃん!
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注) 大型反物質爆弾と表記してますが、正確には反物質爆弾を使用した、ある程度指向性のある対宙機雷を二重構造になっている内側の本体全ての面に沢山貼り付けて、一気に炸裂させた感じです。
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