第15話 煽り合いからのーぉ、試合開始だよ!

 見たことない文字に華やかな演出。聞いた事の無い音楽が流れて来た。しかも3Dだね。映像に奥行きがあるよ!


 これ、向こう異星で放送されてる番組かな。


「お遊びねぇ。大丈夫! 綾だっけ? ……に美崎! 手加減はしてやる。私は最年少トップガンだからな!」


「うん。ワタシも出来るだけ加減するアルよ。ネトゲでは最強アル」


「美崎ちゃんは強いよ! 手加減できるかなぁ」


「ん、手加減するのはわたし」


「言ってくれるじゃねぇかぁ、素人が!」


「航宙戦はネトゲと同じ、以下同文アル」


「ありゃ、煽り合いになってる」


「……」


「良いですねぇ! もっと煽り合って下さい! 視聴者も大盛り上がりです!」


 白ネズミさんは、悪徳白ネズミさんな台詞だ。


「でもありがとう! 手加減とか気を使ってくれて!エミリーちゃん、鈴玉リンユーちゃん! アリナちゃん!」


「……」


「綾、ロシアの子のアリナは何も言ってない」


「あ、そうだね、でも大丈夫! みんな優しい子だと思うよ。美崎ちゃん」


「じゃ、頑張ろうね、みんな、アリナちゃんもね!」


 アリナちゃんは美崎ちゃんみたいな無口系な子だから、こちらから声掛けないとね。


「……!」


 アリナちゃんは少し表情が変わった。うんうん。美崎ちゃんと最初に会ったときを思い出すよ。


 みんながちょと笑顔してる。わたしも笑ってる。


 笑顔は良いよね! 美崎ちゃん!




「紳士、淑女の皆様! 惑星『地球』最高の人材を決める一戦が間もなく始まります!」


 異星人なのか知らない言語の歓声と地球のあらゆる言語の歓声が聞こえて来た。


 白ネズミさん演出の放送映像枠が右上に移動し、邪魔にならなくなった。


 百九十六の機体が、赤い薔薇のような異星人の巨大なお舟を背景に勢揃い。


 壮観だなぁ。


 スマホ持って来るの忘れちゃたよ。写真撮れない。残念だよ。


 戦闘区域は一万キロメートルの球状だけど、開始時点では皆、視界に入る範囲に居る。


 アリナちゃんの大きな球体の機体は、皆のど真ん中。意外と目立ちたがりなんだね。可愛い!


 エミリーちゃんのF-三十五と子機達、鈴玉リンユーちゃんの機体の群れはそれを挟んだように端と端に遊弋ゆうよくしている。


 端っことか意外と恥ずかしがり屋なのかな。


 美崎ちゃんは後ろの目立たない位置。目立つの嫌いな美崎ちゃんの定位置だね。


 わたしも、皆が見えるから後ろの位置は超ラッキー。


「頑張ろうね、美崎ちゃん!」


「ん。絶対に勝つ。勝たなくちゃ駄目、彼女達では能力不足」


 いつになく気合の入ってる美崎ちゃん。上を見上げると、怖いくらいに目付きも鋭い。


 白ネズミさんのカウントダウンの声が聞こえて来た。


「五・四・三・二・一、開始ですーーーーーーーーー!」


 開始の宣言とともに、いきなり眼前が真っ白に染まり、激しい衝撃が襲ってきた。

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