第13話 いやん、わたし戦える特技とかないのだよ、わたしが居ないと勝てない? 仕方ないなぁ美崎ちゃん。

 家の中には警官が来て、銀眼鏡達を尋問している。


 ふっふっふ。お母さんが通報したのだよ。警官が来るまでの数分間、銀眼鏡にお茶を出したりして時間稼ぎ。銀眼鏡は飲みはしなかったけどね。


 お父さんも協力して、家をぐちゃぐちゃにした事を問い詰めてた。夫婦の阿吽の呼吸って凄いね。


 揉み消せるのかもしれないけど、下っ端警官(御免なさい)はそんな事は知らない。当然職務質問する訳だ。状況は押し込み強盗に近い。


 警官が、上の人とのやりとり完了するまでの間は犯罪者扱い。応援の警官まで呼ばれて凄い表情でこちらを見てる。


 ざまぁ(二回目)


 多分、やり過ぎなので、揉み消せても降格か免職もあり得るとはお父さん。


 良い気分でリビングの窓から外を見ると……何かが落ちて来た。


「脚?」


 はたと気づいて、つっかけ履いて庭に出ると、美崎ちゃんの機体が庭に降り立っていた。


 でっかいよ。


 銀眼鏡も警官も窓側に来て覗き上げてびっくりしている。


「綾、これ着て早く来て」


 人型機体の手に乗って操縦席から降りて来た美崎ちゃんが服を渡して来た。


 慌てて受け取って広げてみる。


「ボディスーツ?」


「ん、綾も一緒に戦ってくれるって言った。綾が居ないと多分勝てない」


 ん? ん?


 わたしの頭を?が飛び回る。


 そういえば一緒に戦ってって言われて、『うん』と返事したことを思い出した。


「お姉ちゃん凄い!」


「いや、弟よ、お姉ちゃんは戦える特技なぞないのだよ」


「ん、時間が無い、早く、綾、綾が居ないと勝てない」


 美崎ちゃんがわたしが居ないと勝てない連呼。


 うーん、そんなに近くで応援して欲しいのかな。


 親友かつ、お姉ちゃん(自称)として放置できないか!


「わかった、今着替えて来る」


「ん、着替え手伝う」


 と、そこまでは美崎ちゃんも平常運転。


「ん、綾、部屋が荒らされてる」


 氷点下の声。びくりとする銀眼鏡と黒スーツ、ついでに警官のおじさん達。


 美崎ちゃんがようやくリビングの惨状に気づいたようだ。


 ゴウって感じの何かが部屋を駆け巡った気がした。


 闘気って本当にあるんだね。


 家族は闘気に当てられて無いから大丈夫だったけど、大人の男達の怯えて震える姿って初めて見たよ。巻き込まれた警官さん達はごめんでした。


 あとで差し入れするから許してね。



「これちょと恥ずかしいね」


 美崎ちゃんに手伝って貰って、お風呂場の更衣室でお揃いの黒いボディスーツに着替えた。


「ん、綾、可愛い」


 美崎ちゃんの鼻息が少し荒い。頬もほんのり赤み帯びてる。


「他人の服を着替えさせるなんて恥ずかしいよね。御免ね美崎ちゃん」


「ん、着る手順とか色々あるから綾だけでは無理」


「ひゃん!やんお尻!」


「ん。御免、ここ狭い」


 確かに家のお風呂場の更衣室は狭い。仕方ないね。


「ん、資料にする。写真撮らせて」


「もー一枚だけだよ」


 美崎ちゃんはどこからかスマホを取り出しパチリ。


 なんか鼻息荒いよ、美崎ちゃん。


 一緒に海へ行った時も結構写真撮られたなぁ。


 二人でリビングに行く。


 体ぴったりのボディスーツ。


「似合ってるわねー、綾」


「父としてはどう褒めれば良いのだろう」


「お姉ちゃん、特撮番組の人みたい」


 母と、弟が褒めてくれたよ。恥ずかし嬉しいね。


 銀眼鏡と黒スーツに警官の皆様が、二人の女子高生の体の線の浮き出たボディスーツに目が釘付けになっている。いやん。


 思わず美崎ちゃんを引っ張って家族の後ろに隠れようとしたけど、美崎ちゃんから闘気出た。


 ずずいと銀眼鏡達を睨んでるようだ。


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」


 わたしからは美崎ちゃんの後頭部しか見えないけど、皆さん怯えて震えて腰を抜かして泣きそうだ。


 巻き込まれてる警官さん、マジ御免なさい。


 どんだけ般若の顔してるの、美崎ちゃん。


 廻り込んで見ようとしたら、何時ものクールな表情に戻してた。もう。


「美崎ちゃん、もう一度怖い顔してみて」


「ん、嫌」


 ひと言で却下された。これ覆らないやつだね。残念。


 おのれー、いつか見てやるからな。

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