第8話 白ネズミさんは美崎ちゃんの大ファンでした!

 銃弾が更に射ち込まれる。


 白ネズミさんを守ろうとしたボディガードさんは倒れたけど、見上げると、白ネズミさんは面白そうな顔して普通に立ってる。


「市ヶ谷美崎様、私を盾にするとは……瞬時に的確な判断。私、更に貴方のファンになりましたよ」


 沢山射ち込まれた銃弾が白ネズミさんの廻りで幾つか空中で止まっているのが見えた。


「こんな原始的な武器でバリアは貫通できませんよ」


 そう言う白ネズミさんの後ろ、割れた窓の外に見える空から、細い光の柱が一瞬立って消えた。


「もう終わりましたよ。皆さん」


 その言葉を聞くと美崎ちゃんは立ち上がり、わたしも釣られて立ち上がる。


 銀眼鏡が頭を抱えた四つん這いの体勢をやめ、乱暴な感じで自分を守っていたボディガードを振り払い立ち上がろうとした時、白ネズミさんを守ろうとして斃れたもう一人のボディガードを見て驚き、怯んだ表情になる。


「あ、救急車!救急車呼ばなきゃ」


 わたしからは、斃れた彼の足しか見えないが、ピクリともしてない。

 わたしは涙目である。


 美崎ちゃんが白ネズミさんをすっと見る。


「ああ、そうですね。美崎様は、データ読んでますものね。はい、治療、治療と」


 白ネズミさんが指を振ると、キラキラしたものが指先から流れ、斃れたボディガードさんの方に流れて行く。


 ちょとの間。


「あっ!斃れたボディガードさんの足が動いた!動いたよ美崎ちゃん!魔法かな!」


「ん、魔法じゃない。ナノ医療ボット。多分応急処置だから救急車」


 斃れた人から呻き声が聞こえて来た。


 銀眼鏡はそれを見て、物凄く欲深そうな表情を浮かべた。


 やーねーと思いながらわたしはスマホで救急車を呼ぶ。


 白ネズミさんはわたしが救急車を呼ぶまで待ち、話し始めた。意外に紳士だ。


 でも美崎ちゃんを見る目が熱いのは変わらない。


「この惑星の人口は八十億。設計イベントで技術情報までアクセスした人は一千万。一部でも理解した人は数千人。それを設計レベルにまで反映したのは僅か四人です。特に美崎様の設計はとても興味深い。私なんかハートを撃ち抜かれましたよ」


 白ネズミさんはハートを撃ち抜かれたポーズ。


「世界一を決める実戦まで後、一ヶ月しかない。時間が無い。もう帰って良い?」


「ああ、設計の修正は二週間後まで、実物の機体引渡しは直前になります。明日公示されるハズですが、予想されてたのですね! 素晴らしい! 何もかも素晴らしい!ハグして良いですか、良いですよね!」


 そう言いつつ白ネズミさんはダイブして来た。


 物凄く嫌悪の表情浮かべて回避する美崎ちゃん。


 白ネズミさんは床に頭をごっつんこ。


「貴様!異星の客人になんと失礼な事を!」


 銀眼鏡が偉そうに怒鳴って来た。


「そうだよねぇ。美崎ちゃん、ハグくらいしてあげれば良いのに」


 もふもふだしね。


 美崎ちゃんは妙にごつくなった自分のスマホを取り出し、物凄い勢いで操作、動画を呼び出すと何か見せてくれた。


 画面には異星の風景、白ネズミさんの母星かな。


「……あれ、みんな服着てるね?」


 わたしはギギギと足元に這いつくばっている白ネズミさんを見る。


「母星の動画ですと、凄い、ハッキングですか。あり得ない!事実なら尚更ファンになりますよ私は!」


 白ネズミさんが何か叫んでいる。


「美崎様が駄目ならご友人にハグを!」


 そう叫んで動きだした!


「!」


 美崎ちゃんが素早く動いて踏みつける!


「ぎゃひっ!」


 白ネズミさんの頭へ足がぐりぐりと捻じ込まれている。痛そう。


「コイツは全裸……」


「変態ネズミさん!」


 白ネズミは美崎ちゃんに踏まれ妙な動き。


「ああ、良い、もっと強く踏んで下さい~」


 変態ネズミさんは美崎ちゃんに踏まれ、歓喜の表情だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る