第7話 どうしよう、どうしたら良いの? 美崎ちゃん!

 次の日、通学途中のバスの中、わたしは美崎ちゃんとスマホを見ていた。


「すごーい、美崎ちゃんの日本一、ニュースになってるよ」


「ん、当然」


 美崎ちゃんは別に喜ぶ訳でもなく淡々としている。


 バスの中の通勤の人達もちらちらと美崎ちゃんを見てる。


「あっと言う間に倒しちゃたんだね」


 物凄い速度でミサイルやレーザーを掻い潜り、先の鋭い棒で突き刺していく。


 動画を見るわたしは感嘆する。


 実は美崎ちゃんは戦闘時にあちこち飛んでいたので、殆ど見えてなかってのだ!


 応援の声は聞こえてたらしいからセーフ!


「ん、テンプレ機体は操縦が難しい」


「美崎ちゃんだけだったね、オリジナル機」


 そうなのだ。日本ではオリジナル機は美崎ちゃんだけだった。


 表示されてる画面からリンクを辿り、更に検索を掛ければ技術情報が山盛り、てんこ盛り!

 それを理解して設計図をテンプレでないオリジナル設計図を描けばそれも反映されたのだ。


 気づいた人は居たらしいが、技術情報を理解出来た人は殆どおらず、それを設計にまで昇華させた人は美崎ちゃんだけだった。凄いね、美崎ちゃん。


「ん、海外にもオリジナル機作った人は居る」


 美崎ちゃんがスマホを向けて来た。


「米国、中国、ロシアの人だね、わー、皆女の子だ、わたし達の世代は優秀なんだね」


 美崎ちゃんも頷く。


「次は一ヵ月後、世界一決める戦いだっけ、強敵だね」


「ん、でも絶対勝つ、彼女達は調べたけど駄目。私が勝つ必要がある」


 おーなんか凄い事言ってる。目がマジで真剣だよ。一体どゆこと。


「綾となら勝てる」


 美崎ちゃんが私の手を握って来たから私も握り返す。


「うん、頑張ろうね」


「ん」


 美崎ちゃんは照れたように赤くなってる。やだもー。クール可愛い。


 もう、わたし、頑張って応援するからね!





 学校に着くと、美崎ちゃんは校長室へ呼ばれた。


「ん、お願い、付いて来て」


 美崎ちゃんにお願いされた。やだもー、お姉ちゃん(自称)としては断れない。

 良いでしょう。付いて行ってあげます。



「お待ちしてましたよー! 市ヶ谷美崎さま!」


 甲高い大声とともにわたし達は招き入れられた。


 校長室へ入ったわたし達を待って居たのは校長ではなく、異星人の白いネズミさんだった!


 校長の机の前に立って待っていたようです。


 なんか物凄く興奮している。


 実物は大人の人間くらいあるんだけど、横幅もあるから結構大きく感じる。


「わー! あの白ネズミさんだ、喋ってるよ! 実物だよ美崎ちゃん」


 思わず大声を出したわたし。


 美崎ちゃんをみると、キモい物を見るように白ネズミさんを見ている。


「君は誰だ!呼んだのは美崎という生徒だけだが!」


 険のある声。


 高価そうな地味なスーツに右手に銀のジェラルミンケース。


 意地悪そうな鋭い目のがっしりした体格の銀眼鏡おじさんが壁側に居て、わたしを睨んで来た。


 偉い人みたいだけどちょと、大分、物凄く、超々好みじゃないかな。


 左右に黒服、サングラスのボディガードみたいな背の高い人が二人。


 銀眼鏡がわたしを睨んだ事に気づいた美崎ちゃんが、体の力を抜いてゆるりとそちらを向く。


 古武術って奴だね。美崎ちゃんが師匠でもあるお爺さんと組み手してるの見たことある。


 師匠をボコボコにしてたけどね。


 ボディガードさん達が弾けるように反応し身構えちゃた。


「いやいや、頭脳だけでなく、戦闘技術もかなりのものとお見受けします!素晴らしい!何もかも素晴らしい!」


 白ネズミさんが小躍りして喜んでいる。


 と、突然窓のガラスが物凄い音を立て割れた。


 美崎ちゃんは床を見て直ぐわたしを引き寄せ、屈ませると、立っている白ネズミさんの影に隠れた。


「弾丸だよねコレ!」


「ん」


 わたしは床に穿たれた穴を見て、戦争映画で見た弾痕を思い出した。


 銀眼鏡は情けない悲鳴を上げて頭抱えて四つん這い。


 ボディーガードは身を挺して彼を守っている。


 もう一人は白ネズミさんを守ろうとして血を撒き散らしながら斃れた。


 どうしよう、どうしたら良いの? 美崎ちゃん!

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