第146話 孵化用バスケット工房の長い一日5
・そじお ¥300- 『バロメッツ』。かつて西洋では綿花が知られておらず、『羊の生える木』が存在すると思われていたことから想像された魔物。冒証シリーズでは未登場だったが、ファンタジー系の作品だと稀に出てくるイメージ。ちなみに検索して出てくる画像はくっっっそシュール。
「な、なんか本当に予想外のものが出てきましたね……」
「ブルル……」
冒証は結構多くのタイトルが出ていて、その中で植物型のモンスターもたくさん登場している。それこそ
「「メー、メー」」
「メェー」
深い森の中、そこだけくりぬかれたように樹木が取り除かれた空間で動く、三匹のヒツジこと『バロメッツ・ヤングツリー』の分身体たち。彼らは広場の手前に隠れる私と従魔の前で、せっせと働いていた。
識別スキルで『農耕型』に分類された二匹が、本体である萎びた木の周りに生えた雑草を食べて除去しつつ、硬い蹄で荒れた地面を耕す。そこに『探索型』の角有り個体が、肥料袋を引きずっていった。
「なるほど? なんで肥料なんかを盗んだのか、ずっと疑問でしたが……植物タイプのモンスターが弱ってしまって、生き延びるために近くの倉庫へ忍び込んだわけですか」
「グルゥ」
・だね
・よく見たら肥料の袋がいくつか転がってる
・草食べてる
・マイケル ¥1,000- 肥料泥棒の謎は解けましたが、①なんでこんなところに1匹(1本?)だけ生えているのか? ②どうして衰弱しているのか? ③テイム?ってことは使役に条件が必要ってことだけど、それは何? など新たな疑問も出てきました。調べるためにもうちのテイマーを動員したいと思います
・伏姫 ¥2,000- さがさないでください
・個茶でやれ愛華ちゃんの配信を荒らすな検証班ども
・結局どうする?
とりあえず向こうの事情は大体理解したけど、ここからどうしよう? トロンさんのところの肥料は返してもらいたいけど、ただでさえ戦闘能力のない、弱っている相手から無理やり取り上げるのはちょっと……。かと言って見逃したら普通にタスク失敗になりそう。
うんうん唸っていると、不意に月が雲に隠れる。手元も見えないほど真っ暗になったことに驚くが、すぐに明るさを取り戻した。
・赤い
・!?
・月が…
・おっと
再び顔を出した月は、真っ赤に染まっていた。降り注ぐ光によって、森全体が赤黒く染め上げられる。生ぬるい風が吹いて、煩わしいほどに木々が揺れた。
「違う、風だけじゃない。何か来る!」
「ポポーッ!!」
「「「メメ……ッ!?」」」
私の『気配察知』スキルが、
すぐに動けるように臨戦態勢を取る私たちと、怯えるバロメッツ・ヤングツリーの前へ、程なくしてそいつは姿を現した。
ゾンビスラッグ LV15
状態:アクティブ(暴走)
属性:アンデッド 弱点:浄化・火・光
好物:植物系アイテム
特性:物理攻撃耐性(微)、暴食
テイム不可 コントラクト不可
「き……」
私たちが隠れる木立から見て、バロメッツ・ヤングツリーを挟んだ反対側から現れたモンスターは、一言で言えば人間大のナメクジだった。それだけでも生理的嫌悪感で拒否反応を示してしまうものなのに、ゾンビと名がつく通り、軟体のあちこちが溶けて粘液と混ざった腐敗液として垂れ流していく。
そんなモンスターが一匹、二匹……マーカーを数え切れないほどの大群となり、文字通りぞろぞろと空間内に侵入して来た。
「キッッッモ!!??」
「――!?」
・ぎゃあああ
・無理無理無理無理
・目玉が濁ってんのにギラギラしてんのキモい
・おげぇ
・冒証スタッフ絶対モデリング本気出すとこ違うだろ!?
・蛇はいいけどナメクジほんとヤダさよなら
・あああああ
・やだー!
思わず素で叫んだけど、これはダメだって! 心拍数がおかしくなって、強制ログアウトされるかと思ったんですけど!? というか映像がグロすぎて、アーカイブ残せなかったり動画サイトから
と、パニックになった頭にふと、ある知識が思い浮かんだ。確か園芸系の本に乗っていた害虫の項目で……、
『ナメクジは植物の若葉や花びらなど、柔らかい部分を好んで食べる。』『食害の他、放置すると作物が枯れる被害が出る。』『被害を受けやすいのはキャベツ、白菜、ほうれん草などの野菜や、バラ、アジサイ、クレマチスなどの花。』
『――その他、サボテンなどの多肉植物や、綿花の若葉や茎も好んで食べる。』
「が、害虫駆除――!!」
バロメッツ・ヤングツリーの本体と、身を寄せ合う分身体たちへと吸い寄せられるように、ゾンビスラッグが侵攻する様子を目の当たりした私は、ほとんど反射的に飛び出していた。
植物の食害被害は地雷です!!
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