第28話 イベントを有利に進めるために

 イベントモンスターの花精そのものは、簡単に倒せる。でも、使ってくる状態異常攻撃が、いやらしい! 接近戦主体で戦おうとすると、二回に一回は毒か麻痺を受けてしまう。

 遠くから魔法で攻撃すれば、花粉を浴びないで済むけど、そうなると一番育てたい黒檀丸が、活躍できない。あとあんまり遠いと、私が魔法を当てられないんだよね……。急募:エイム力。

 できれば、状態異常を予防するアイテムが欲しい。そう思って周囲を捜索していると、とある素材を発見した。




『予防木の新芽』

 品質:3 レアリティ:3 重量:0

 素材アイテム。(イベント限定)

 春に芽吹く新芽。いたずら花精が振りまく花粉の毒性を、中和する成分を含む。


『ワクチンミネラル』

 品質:3 レアリティ:3 重量:0

 素材アイテム。(イベント限定)

 雪解けの時期にのみ表出される岩塩。いたずら花精が振りまく花粉の毒性を、中和する成分を含む。




 この二つが、イベント中であれば、どのマップでも手に入るらしい。これらを『薬術』や『錬金術』などの生産スキルで組み合わせると……。




『花粉予防のタブレット』

 品質:3 レアリティ:3 重量:0

 効果:口に含むことで、いたずら花精による状態異常攻撃を、40%の確率で無効にできる。

(効果時間:3分、クーリングタイム:10分)

 薬品アイテム。

 いたずら花精が振りまく花粉の毒性を、中和するタブレット型の薬品。塩辛く、後味が苦いため、大量摂取は非推奨。

 テイマーが使役する従魔にも使用可能。




「やっぱり、救済措置があるんですね。これを使えば、ある程度は戦いやすくなりそうです」


・それ納品してもポイント取れるよ

・他にも毒消し麻痺治しの素材が普段より採取率うpしてる

・課金版は予防率100%のチート


 あ、やっぱり課金アイテムでは、上位互換のやつがあるんだ。

 どうしようかな? 一応、欲しいものは決めてはある。けっこう必要なポイントは多いけど、イベント中に目いっぱいがんばれば、達成できるはずだし……。

 よし、決めた。今回のイベントでは、ぎりぎりまで自分の力でやってみよっと。こうやって自作するアイテムでも、やりくりしていけば、なんとかなるはず。最終日になってもダメそうなら、課金も視野に入れる感じで。


「私の錬金術のスキル上げも兼ねて、薬は自作の物を使っていきます。目標は、ポイント五百点で手に入る、『』! さあ、がんばりますよ!!」


・!?

・畑?

・愛華ちゃんアイテムじゃなくて土地がほしいの?

・なぜそこで畑!?

・農耕プレイにまで手を出すのか

・ふぁ!?


 あれ? 言っていなかったっけ?

 コメント欄のざわつきに目を丸くした私は、改めてイベントで狙っている、報酬の確認をすることにした。


「はい。畑です。フードリーフとかスネークベリーを、家庭菜園みたいに自分で作って、食品を自給自足したいなって思っています。今回のイベント報酬のカタログを見ていたら、丁度よく畑がもらえる権利書があったので、お金をかけずに土地を手に入れる絶好のチャンスだと、思いまして」


・農民ならチュートリアルで畑もらえるけど、それ以外は金払わんと土地持てんからな

・普通の畑なら100Pで交換できるよ?

・納屋必要か?


「要ります! 納屋が重要なんです! というのも、『醸造』で造れるアイテムは、インベントリに入れておくよりも、ちゃんとした建物に置いて、熟成させた方がいいんです。具体的には、完成までの時間が短くなって、品質も上がります」


・そうなの!?

・そうだよ

・酒に加工するアイテムも、後半の素材がいいから、醸造家プレイはゲーム中盤以降がおすすめ

・それ専用の冷暗室を作ればスキルlvにもよるけど1~2日は短縮できるし品質+3はいける


 おお、冒証シリーズ履修済みの粋人さんが、解説してくれた。

 そう。私がわざわざ納屋つきの畑にこだわるのは、黒檀丸と青梅のためだ。この子たちに少しでも安く、それでいて品質のいいものを、食べさせてあげたい。あと、食材探しに当てる時間を減らして、配信のマンネリ化を防ぐ目的もあるよ。

 農耕シーンは、最悪、配信外でやればいいからね。


「あっ! 花精いました! 今日は町に戻りますけど、倒せるならポイントのためにも、じゃんじゃん戦いますよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る