第27話 第一回イベント『ポリノシス・クライシス!』

“冒険の証 -world online- 公式イベント『ポリノシス・クライシス! ~いたずら花精をやっつけろ~』が開催されました!


開催期間中、フィールドのいたるところに『いたずら花精』というモンスターが、出現します。状態異常を起こす花粉を振りまくこのモンスターは、冒険の証世界の住人にとっても厄介者です。見つけたら倒してしまいましょう。


そのほか、イベント限定の特殊クエストをクリアしたり、『いたずら花精』を倒したりすると、『イベントポイント』が手に入ります。これを集めて、冒険者ギルドに向かえば、ポイントに応じた報酬がもらえますので、皆さまふるってご参加ください。


開催期間中は、連続ログインボーナスが存在します。最後には特別な称号が配られますので、ぜひ受け取ってください。


イベントを進めやすくする限定アイテムガチャ(有料)の案内はこちら……”




「えー。今日は冒証初のイベントが始まる日ということで、開催時間に合わせてログインしたんですが……」


・超混んでる

・こんばんは

・もはや獲物の奪い合い

・戦場や・・・


 うん。ガチ勢の本気をなめていた。

 サービス開始日を彷彿とさせる、ごった返し加減。町には生産職のPLがイベント用のアイテムを作っては売っていて、露店が普段の数倍の密度で広げられている。

 ちらっと門の外を覗けば、フィールドは『いたずら花精』――緑~黄色のグラデーションカラーの、二頭身で頭が花になった人形みたいなやつ――を、ポップした傍から狩っていく戦闘民族たちの姿が……。


・すんごい形相で○しに行ってるやつらはなんなん?

・←花粉症の恨みを込めて攻撃してる

・「駆逐してやる!!」


「あー……リアル花粉症の人の殺意が、こっちにも伝わってきますね。ミュートしていても分かるほどに。うん、予定変更します。今日は数体だけ花精を倒したら、町に戻って様子見しましょう」


・おk

・あの中に馬で乗り込むのはな

・まあ2週間はあるし

・初日は捨てか


 本当なら最初から、積極的に花精狩りをする予定だった。でもこんな人ごみの中では、黒檀丸の機動力が生かせないし、青梅も邪魔になりそう。

 というわけで、なるべく広い場所を探そうと、セキナンの町から赤い岩場へ移動。PLの隙間を縫うようにして進み、ようやくまだ誰とも戦っていない花精を見つけた。

 忘れずに識別をかけて、データを確認する。


いたずら花精(イベントモンスター) LV6

状態:アクティブ

属性:? 弱点:?

好物:不明

テイム不可 コントラクト不可


「よし、いきます! まずは黒檀丸に……『アタックアップ』!」


 黒檀丸のレベリングも兼ねて、この子をメインアタッカーに決めた。私は先日覚えたステータスアップ系の補助魔法で支援し、青梅は万が一のときに備えて待機してもらう。


「やった、クリティカルが入っ、た!?」

「!?」

「クスクスクス」


・毒はいった

・こな?

・なんだ

・!

・花粉で毒った!!


 攻撃力上昇バフがかかった、黒檀丸の突進がエネミーにヒットする。運よくクリティカルも入り、HPを大幅に削れたものの、花精はカウンターのように、花粉を浴びせかけてきたのだ。

 花精に密着していた黒檀丸は躱すことができず、粉を被って毒状態になってしまう。慌てて駆け寄り、毒消しを使おうとしたが、距離を取った花精が鋭い木の葉を飛ばして来たせいで、上手くいかない。


「ご、ごめん、青梅! フォローお願い!」

「……」


 完全に翻弄されてしまい、てんぱった私は、仕方なく青梅にヘルプを頼む。

 私の指示を受けた青梅が、素早く動いて花精に接近し、あっという間に倒してしまう。今までのぐだぐだっぷりはなんだったのか、というほどスマートな終わりだった。


「まさかあんな風に状態異常をまいて来るなんて……物理アタッカーに不利じゃないですか!」


・今そのことでファイターが切れ散らかしてる

・課金アイテムであの花粉攻撃耐性の薬売ってるよ

・魔法で攻めるか


「はあ……これはちょっと、戦い方を考えないといけませんね。青梅に頼ってばかりも、いけませんし」


 うーん。意外と難しいなぁ、このイベント。

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