第25話 蟒蛇の醸造樽

 さてと。私の携帯食と黒檀丸も食べられるサラダは、作ることはできた。残る作業は……。


「青梅、出番だよー。あなたがくれたたるを使ったお酒の造り方、教えて?」

「!」


 青梅の『醸造』スキルと、とあるアイテムを使った、お酒造りだ。




『蟒蛇の醸造樽』

品質:10 レアリティ:7 重量:5 耐久値:-

 醸造用アイテム。

 古き蛇が秘蔵しているとされる酒樽。

 酒以外は作れない代わりに、非常に質が良く、芳醇な品が出来上がるという噂。

 その樽で熟成された幻の酒を、もし口にできれば、幸運が舞い込むという。


※このアイテムは分類:アルコールのアイテムのみ、作ることができる。




・>>>R度7<<<

・こんなの序盤でポンと渡すな!?

・テイムしたらアイテムがもらえるの?

・←テイム時にドロップアイテムを同時入手できるモンスターもいる。でもこんなヤベーアイテムをくれるやつは普通いません@白目剥いてる検証班

・←生㌔よ


 ストレージから取り出したのは、青梅をテイムしたときに、一緒に手に入ったアイテムだ。

 大きさは三十センチメートル×三十センチメートルくらい? けっこう小さいやつ。きれいな白木の板で作られていて、樽の側面には見事な書体で、“蟒蛇”と書かれてあった。

 青梅はスキルも持っているし、せっかくだから、作ってもらおうと思ったのだ。


「比較用に、私も『醸造』スキルを取って、普通の醸造樽を買ってきましたので、いざ検証開始です!」


・ヘビが酒を造る光景がみられるチャンネル

・ありがてぇありがてぇ

・いつの間にスキルと樽をゲットしたんだ

・さ、酒造り系Vライバー、だと、、、!?


 まず取り出したのはワイルドベリーとスネークベリー。青梅を初遭遇したときに、全部投げちゃったけど、また採取し直してきました。あとでドライベリーとベリージャムを作る分は、ちゃんと取り分けてあるから、ばんばん使ってOK。

 青梅に見せたところ、スネークベリーだけ使いたいみたい。ワイルドベリーは、私が使おう。

 冒証でのお酒の造り方は、けっこう簡単。樽の中に、果物とか穀物系の食材アイテムを十個以上――これは樽の大きさで、量が変わる――と、水を入れて、蓋をしてMPを消費しながら『醸造』スキルをかけて、数日置く。これだけ。


「使う樽はどっちも最小サイズなので、ベリーは最低数の十個だけ。これを入れたら、次はお水を、わっ!?」


・!?

・あ

・青梅せんせーのストップがかかりました

・なんだ!?


 びっくりした……。樽に水を注ごうとしたら、青梅の尻尾が巻き付いてきたんだもの。

 どうしたんだろう? と思っていると、青梅は私の持つ木桶に、吐息を吹きかけた。

 直後、水が光る。


「うえっ!?」


・ファッ!?

・目がああああ

・!?

・なになに?

・!?


 突然の出来事に動揺した私は、慌てて桶を机に置き、鑑定をかけた。すると、ただの井戸水が、違うアイテムに変化していた。



『浄化水』

品質:2 レアリティ:3 重量:2

効果:飲むことで、給水度+8%、アンデッド特攻(微)/1分、アンデッド系モンスターにかけることでHP-5

好物:植物系

 食材・浄化アイテム。

 水を神聖な方法で浄化したもの。飲んだ者の渇きを潤す他、アンデッドへの抵抗力を高める。

 アンデッドに直接使えば浄化もできるが、元となった水の品質が良くないため、祓いきることは難しい。




「……なにかと思ったら、『浄化』かぁ。えっと、普通のお水じゃなくて、これを使いたいの?」

「……」


・頷いてる

・待って浄化かで終わらせるの?

・もっとツッコんでくれ

・愛華ちゃん?普通に料理に戻らないで??

・ちょい待ち?

・ええええ


「あれ、なんでみなさん、驚いているんです? 完成品の品質を良くするために、浄化水を使うのって、割とよくある裏技じゃないですか?」


・よく知らない裏技ですね(白目)

・浄化水は戦闘かクエストで使うものであって料理素材ではない

・んなわけあるかい

・だとしてもモンスターが勝手にやり出したらびびるんよ

・ええ・・・


 うーん? なんか、認識の違いがあるみたい?

 まあいいや。ようは最低品質の井戸水じゃなくて、ちょっといい素材を使うってだけだしね。

 青梅は他にも、水を入れる前に、果実を軽く潰していた。尻尾で器用にやるねぇ。

 できるだけ同じ条件で比較したいから、私も見様見真似で、ベリーを下処理する。青梅が浄化してくれた水を注いだら、ちょっと混ぜて蓋をした。


「ここでスキル『醸造』を発動。……う、やっぱりまだレベルが低いから、けっこうMPを、持っていかれますね……」


 それでも失敗することなく、仕込みが完了。

 ウィンドウを確認すれば、青梅作の『蟒蛇の醸造樽』の方は、完成まで三日。対して私の『初心者用の醸造樽』は、完成まで五日かかる、と表示されていた。


「んー? 造り方に違いはないはずですけど、こんなに差が出るとは。……考えられるのは、スキルレベルの違いと、樽の性能の差、あとは……ベリーの種類、ですかね?」


・青梅ちゃんレベル高いから醸造スキルもそれなりに高いかもね

・醸造LV1なら5日かかるのが普通:生産職

・マイナーだからよく分からん

・楽しみ

・売ってほしい

・愛華ちゃんお酒飲める?


「私は成人済みなので、飲もうと思えば飲めますよ。二日酔いがきつくて、あんまり得意じゃないですけど。……出来上がったら、基本は料理用に使うか、青梅のご褒美代わりになると思います。スネーク系は、お酒が大好物なので」

「!!」


 あ、青梅がものすごく反応した。やっぱりこの子も、お酒が好きみたい。……冒証では、アルコールを飲み過ぎると『酩酊』って状態異常になるから、常飲はさせないけどね。


「あ!! 大事なことを忘れていました! えっと、冒証ではリアル未成年PLは、アルコール分類される飲み物や料理を、そもそも摂取できませんが、未成年飲酒はいけません。あと、ゲームではOKですが、リアルでお酒を自作して販売する行為は、法律に引っかかるのでやめましょうね!!」


・いまさら

・炎上回避ムーブ入りまーす

・そうだね

・大事なコト

・あ、そういう仕様なのね?


 ちゃんと言っておかないと、どこから炎上するか、分からないからね! 自衛のためにも、発言は注意が必要だ。

 このあとは、残ったベリーでジャムとジュースとドライフルーツを作って、外で黒檀丸と合流してから、和やかに終わったよ。次回は黒檀丸も活躍できるような、配信内容を考えないとね。

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