第24話 調味料を作りましょう

 ログインすると同時に、配信アプリをオンにする。リスナー……粋人たちへの対応もそこそこに、職人ギルドに向かいお金Gを払って、個人作業場を借りた。

 職人ギルドに入っていれば、無料で使えるんだけどね……。三つのギルド会員にはなれないからなぁ。ゲームを進めるか、アップデートで解放されることを、期待しよう。


「お待たせしました。今日は休息も兼ねて、一日生産していきますよー」


・お料理回だ

・愛華ちゃんの手料理!?

・作業場借りるお金ができてよかったね

・ジャケット脱いだ?

・なんで蛇ちゃんもいるの?

・従魔も入れるんだ


「はい。昨日、クエストの納品をがんばりましたので、無事にギルドの個人作業場を、借りることができました。キットを使えば広場でもできますけど、やっぱり生産作業は一人で集中したかったので。……ジャケットは脱ぎました。あれ、防御力はあっても、装備中は器用値が下がっちゃうんですよ。……従魔の中には、生産スキルを持つ子もいるので、設定すれば入れますよ? 青梅の醸造スキルを試すためにも、連れて来ました。黒檀丸はお休みです」


 コメントをさばきながら、素材を取り出して準備を行う。まずはフードリーフの処理だ。

 なお、青梅の出番はもっと後になるので、しばらくくつろいでてもらう。


「フードリーフは花・茎・葉っぱに分けます。根っこまでついているものがあれば、それも取っておきますよ」


・実はないの?

・←実がついたフードリーフは第三エリア以降からしか出ない

・←農民が作ったやつならあるけどフィールド産はない


「そうなんですよねー。実もデザートの他にも、果汁を加工すればお砂糖を作れるので、ほしいんですけど、今の私のレベルじゃあ、手に入らないんです」


 なんとかついて行けるコメントに返答しながらも、手は止めない。リアルと違って、切りたい部分に包丁の刃を当てれば、安全かつ好きな風に、切り分けられるからね。そこまで集中力が要らないのだ。

 と、ここでアナウンスが聞こえた。それは、待望のスキルレベルアップ通知である。


『スキル『料理』のレベルが上がりました。アーツ『下ごしらえ』を取得しました』


「あっ! 『料理』がレベルアップしました! これで設定しておけば、一度やったことのある作業を、MP消費して自動でやってくれるんですよ!」


・リアルでほしいアーツ

・加熱作業が挟まるとアーツの対象外になるからそこだけ気を付けて

・フードリーフの山が

・処理したものがこちらになります


「リアルでもほしいですよねー。料理で一番時間がかかって、大変なのは下ごしらえの部分なので」


 葉っぱと花はそのままサラダに。これはチュートリアルでもやったから、失敗なくできた。

 次は初めての作業になる。正確には、過去作のレシピの再現だから、仕様変更がなければ、うまくいくはずだけど……。


「短く切った茎を水からゆでて、沸騰したらざるにあげて、水気を切って思いっきり絞れば……っ」


『食用油』

品質:3 レアリティ:2 重量:0

効果:なし

 食材アイテム。

 フードリーフから抽出した油。

そのままでは食べることはできないが、他の食材を焼いたり揚げたりする際に使用する。


『レシピ:食用油が登録されました』


「やった! 油ができました!」


・油ってそう作るの!?

・勉強になる

・冒証経験者の料理人には有名なレシピ


「焼いたり炒めたりする料理を作るとき、これを使うと品質が上がるんで、便利ですよ」


 レシピをゲットしたから、これから油が必要になれば、材料とMP消費だけで、大量生産できる。

 次は根っこ。洗ったもの――ストレージに入った時点できれいになっているけど、気分的の問題で、私は洗うようにしている――を、水分をふき取ってから、フライパンで乾煎りする。白くからからになったらボウルに移して、すりこぎで粉々に。

 こうすれば、


『食用粉』

品質:3 レアリティ:2 重量:0

効果:なし

 食材アイテム。

 フードリーフから作った粉末。

そのままでは食べることはできないが、穀物の粉末の代用品として使える。


『レシピ:食用粉が登録されました』


「こっちも、うまくできました! これで今後、パンとかクッキーが作れますよ! ちなみに、この油と粉は『錬金術』や『薬術』スキルでも作れます」


・手際がいい

・初レシピで品質3?

・もしかして過去作で生産職やってた?

・焦がさないで粉にできるのすごい


「冒証はいろいろやってましたね。それこそ戦闘スキルを取らずに、生産系に没頭したりとか、魔法や武器禁止縛りの、脳筋ステゴロプレイとか……」


 粋人さんとおしゃべりしながら、料理を作り続ける。たまにはこういうのも、いいかもしれない。

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