第11話 称号=『冒険の証』
採取と戦闘を挟みながら、私は黒檀丸に乗って、セイトウの町へと向かう。
まあ、ゲームの最初期マップだからね。まっすぐ伸びる一本道だし、寄り道していたとしても、迷うなんてことはあり得ないけど。
「ビッグラットのドロップアイテムと、薬草の採取は十分ですね。個人的に錬金術スキルの練習に、使う分も確保しましたし……よし! そろそろ、町長さんのところに行きましょう!」
・がんばれ
・いてら
ストレージを開き、必要な分の素材を手に入れたことを、改めて確認し終えた私は、リスナーに行き先を宣言しながら、町中に足を踏み入れた。
あ。もちろん、黒檀丸からは降りているよ。さすがにお行儀悪いからね。
「まあまあ! 冒険者になったことを私……町長のイーストに、わざわざ報告しに来てくれるなんて……なんていい子なんでしょう」
セイトウの町の冒険者ギルドで、町長への挨拶のクエストだけ受けて、町長宅に直行。今日は変なPLに絡まれることもなく、私はそのまま、青い屋根が特徴の屋敷にいた町長――グレーの髪をお団子にした、品の良いおばあちゃま、って感じのキャラクターだった――に話しかける。
会話コマンドを選択すれば、NPCはころころと笑いながら、私を褒めてくれる。
そしてここからの展開が、他三人の町長たちと大きく変わった。
「そう……あなたは各町の町長たち全員に、挨拶してくれたのね。うふふ、本当にいい子ね。……極楽鳥花愛華さん。あなたは冒険者として、これから世界中を旅するのでしょう。でも、旅というのは、途中で町や村に立ち寄る必要が出て来ます。たとえただ通り過ぎるだけの場所だとしても、冒険者にとって、町とそこに住む人々とのつながりは、とても大切なもの……あなたは、それを理解しているのですね」
しみじみと語っていた町長さんは、ふと言葉を途切れさせて、手を差し伸べて来た。
握手かな? そう思った私が、反射的に手をつなぐと、システムメッセージが届いた
『
「うふふ。いつか旅立つとしても、礼儀を尽くしてくれたあなたには、私たちも誠意をもって返しましょう。その
・タイトルktkr!!
・それめっちゃ強いよ
「初称号! やったー!!」
イベントが終了した直後、思わず飛び跳ねる勢いで喜んじゃった。でもしょうがないよね、称号だもん!
そして、今回手に入れた称号の効果はこちら。
コクホクの町、セイトウの町、ハクザイの町、セキナンの町に存在する、四人の町長たちから認められたことを示す。
この称号を持つ者は、住民への好感度ボーナス(微)を得る。
また四つの町を、転移で行き来できるようになる。(※町の入り口にいる門番に話しかけることで、行き先を選べる)
「……めっちゃ良くないですか、これ!? 地味に面倒だった町同士の移動が、超楽になりますよ!!」
喜びのまま、私は称号をセットする。こうすると、自分の名前の前に、指定した称号が表示されるんだー。つまり今の私は“はじまりの町の冒険者”極楽鳥花愛華 っていう風に見えるよ!
・あんなゴミクエからこんなぶっ壊れ称号が生えるなんてなぁ
・検証班にリークしなくちゃ独占できたのにね
はしゃぐ私とは裏腹に、リスナーのコメントは冷めている。理由は単純で、この称号については、初日からもう明らかにされてしまっているから。
っていうか、私の配信を見た検証班たちが、町長の挨拶クエストを先にクリアして、その情報を拡散したっぽい。ついでに、なんで私がそのことを知っているかというと、先を越されちゃったよ! ってリスナーの一人が、わざわざ私のアカウントにコメントで教えてくれたんだよね。
「前にも言いましたけど、生配信している情報ですから、別にいいんです。秘匿なんて言葉は、私のゲーム辞書から削除しましたー。……それに、次はもっとすごいものを見つけて、先にゲットしてみせますよ!」
・それでこそ愛華ちゃん!
「はい! なので、チャンネル登録と高評価、よろしくお願いしますね?」
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