第16話

 俺と綾子は、また喧嘩をしたままの状態で、離れ離れとなった。


 由衣はあれから何度も電話をかけてきて、その度に俺たちはデートをした。

 俺は気まずい思いを抱きながらも、一途な由衣を切り捨てる事が出来なかった。


 ナンパで引っ掛けた割りに、由衣は本当にいい子だったんだ。

 年上の女をつかまえて、いい子なんて変かもしれないが、最初の印象より由衣は純粋な所が沢山あった。


 逆に俺は不純で、誘われるままに他の女とも付き合っていた。

 由衣はそれを知っていながら、何も言わない。


 由衣は、何故黙っているんだろう?

 どうして、怒らないんだろう?

 俺の事を嫌いになっても、当然な状況じゃないか。


 俺はそれが余計にイライラして、わざと由衣の前で他の女と電話して見せたりもした。 

 だが、傷ついた顔をしながらも、やはり由衣は何も言わなかった。


 俺は、益々最低な男になっていく。そんな俺を好きだと言う由衣が、なんだかとっても哀しく思えてならなかった。


 綾子は、今年の正月には帰って来なかった。

 バイトが忙しくて、休みが取れなかったそうだ。


 そう言えば、綾子が今どんなバイトしているのか知らなかったな。なんだか色々あって、ききそびれてしまった。


 綾子の事だから、変なバイトはしてないとは思うけど・・・・・・・。


 ・・・・・・・綾子、俺はお前に会いたい。


 じゃないと、どんどん嫌な男になっちまう。

 お前が東京で頑張ってる間に、俺はここで腐っていっちまうんだ。


 こんな自分を何とかしたいけど、今の俺には駄目だった。女々しい男になって、ただ寂しさを紛らわす事しか出来ない。


 俺はやっぱり、餓鬼なんだ。大人のように、自分を保つなんて出来やしねぇんだ。

 

 他人を傷つけ、届かない思いに埋もれてくる自分が、ひどく惨めだった。



 

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