第12話

 中学二年生の夏、俺の背はまた二センチ伸びた。

 綾子とはやっと五センチ差、このまま止まるなと毎日悲痛な思いで願う。


 バスケの方は、相変わらず補欠のまま。

 身長が足りないって事もあったが、どうやらスポーツ全般において、俺にはセンスがないらしい。


 それに気づいた途端、俺は練習に行くのが面倒になり、もっぱら仲間達と街に遊びに行く方が多くなっていった。


 別に、どうでもいいだろ。

 俺がバスケをしてたのは、レギュラーになりたかったからじゃない。

 ただ、綾子との差を埋めたかっただけだ。


 だけど、そんな考えだったから、ある日久しぶりに部室に顔を出したら、俺の場所なんか全然なくなっちまってた。

 まるで、何しに来たんだって見られて、やる気もすっかりなくなって、結局バスケはやめてしまった。


 分かってるさ。俺が悪い。

 でも・・・・なんだか、ひどく面倒臭かった。


 何もかもが、もうどうでもいい。


 突然、今までとは違う自分になりたくて、俺は髪を思いっきり金髪に染めてみた。

 そんで、ピアスの穴も開けた。

 

 何か変わるような気がして。

 でも、何一つ変わりゃしねぇ。


 父さんや母さんは、あんまいい顔はしなかった。でも、何も言わなかった。

 今ままで仲良かった奴らには、「お前、変わったな」と言われた。

 唯一、綾子の母さんだけ、ミュージシャンみたいだと言って笑ってた。


 そういや、おばさんは何時も俺の味方になってくれてたな。

 おじさんの方は、凄く嫌な顔をしたけど。


 でも、そんな事はどうでもいいんだ。ちっぽけで、ささいな事だ。

 それより問題なのは、最近の俺の精神状態がやばいって事。なんだか、こう、イライラしちまって、どうにも自分が抑えきれない。


 大人に反抗したり、親を疎ましく感じたり、兄弟達が煩わしくなってしまう。

 それは駄目だと分かっていても、自分ではどうする事も出来ないんだ。


 自然と、家に帰るのが嫌になり、学校も時々サボるようになった。


 親は何度も学校へ呼び出され、俺はその度に気まずい思いをした。

 綾子が夏休みで帰郷して来たのは、丁度そんな頃だった。

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