第10話

 元旦は、いつの間にか俺の家に綾子の両親も上がり込んで、朝から宴会のように盛り上がった。

 俺の親と綾子の親は、とても仲が良かった。だからまあ、こういう事はしょっちゅうだった。


 それから、みんなで賑やかにお節を食べて、しばらくしてからだった。

 突然綾子は、俺の部屋を見せろと要求しやがった。


 綾子の部屋には何時も行ってたけど、綾子が俺の部屋に入るなんて、今まで無かった事だ。

 だから、ちょっとばかり焦った。


 いきなりだから、見られたくない物とかあるだろ。それを隠す為に、俺は綾子に妹や弟のお守りを押し付けて、慌てて二階の階段を駆け上がらねばならなかった。


 妹の美佐江も、弟の健治も、綾子には良く懐いていた。

 ほら、あの性格だからな、歳はとっててもどっか子供っぽいとこあるし、美佐江も健治も綾ちゃんなんて呼んで、殆ど友達扱いだもんな。


 綾子も綾子で、それを喜んでるみたいだし。


 とにかく、どうにか急いで部屋を片付けると、俺はようやく綾子を部屋に上げてやった。


 流石に久々だし、俺もでききるだけ綾子と二人だけになりたかったから、妹達に何時もは貸してやらないゲームを仕方なく貸して、部屋に来ないよう追っ払った。


 綾子と二人だけになると、俺は近くにあったクッションを渡して、その辺りに座るよう勧めた。

 綾子は何故かクッションを使わず、両手に抱えると、絨毯の上に足を投げ出して座った。


 ・・・・・お前さ、女なんだから、スカートはいてる時くらい、もっと女らしくしとけよ。


 そう思って苦笑しながらも、綾子の細い足首にちょっとドキドキしてしまう、自分がなんだか情けない。


 俺は、椅子に座って頬杖を付き、なんとなく目の前にあったノートをぱらぱらとめくった。

 会う前には、話したい事一杯あったのに、いざ目の間にすると思い浮かばない。


 それでもなんとなく世間話みたいな事を話し、少し話しの流れがスムーズになってくると、綾子は不意に悪戯っぽい顔でおれにこう質問しやがった。


 「いっちゃん、彼女で来た?」


 やはり綾子は、俺の気持ちなんてちっとも気づいてないんだな。

 俺はむっとして、そんなものはいないと、ハッキリ言ってやった。


 くるりと椅子を回し、綾子をじろりと睨む。それから腕を組んで、俺も綾子に彼氏が出来たのか尋ねた。


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