変わり目と雪女 ラスト

 彼女は、亜太郎君の家に着くと、自らについて話し始めた。


 〇



 私は生まれた時から雪隠ノ民として新潟で暮らしていました。


 雪隠ノ民は、現代のイメージでいうと陰陽師が最も近いものになります。かつて日本に現れていた物の怪を他の人間にはない能力で討伐し、人々から報酬を貰うという生活をしていました。


 しかし時代と共に物の怪はいなくなり、私たちの存在も妖怪としておそれられるようになったのです。


 それでも私たちは懸命に暮らしていました。


 しかし、十年前、一人の男が現れ、雪隠ノ民が暮らす村を焼いたのです。


 当時、十六歳だった私は逃げることに必死で、村の皆を捨ててしまいました。それからはあの男の陰に怯えて暮らす日々、仲間はもういない。


 だから、この地域で冬を感じだと気は運命だと思ったのです。


これほど強い力を持つ民と、十年間力を蓄えた私なら、村を焼いたあの男に復讐できると思ったんです。


 ○


 彼女は雪埜千里(ゆきのせんり)と言う。雪隠ノ民とは言ったが――まあ雪女でも通じるので、それでもいい。


千里は、その後、雪隠ノ民が一人の男に負けてしまったのは、地球が温かくなって雪女としての力が弱まったことが原因なんだとも語った。


 そう言われると、私達にも原因はあるんじゃないかと思ってしまうもので、私は二次元のなかに逃げないか? と提案をした。


 この前、アニメの中に入ることが出来たので、きっと彼女を小説の中に入れることもできるだろう。出来なくてもできるようにする。夢を見せてしまった責任だ。


 しかし、彼女はそれを断った。


「私が最後ならそれでもいいんです。私は一人で生きていく覚悟が出来ました」


 そう言った。


 寂しさを知った上で、一人で生きていく決心をしたのだ。


 きっと彼女は世界で一番強いのだろう。


 私は、彼女が世界で一番強いんだなと思ったよ。


「私はこの世界に負けたくない。この世界で生きていきます。夢を見させてくれて、あるいは夢を覚ましてくれてありがとうございました」


 そう言って、彼女は去っていった。



 〇エピローグ


「君、亜太郎君?」

「はい?」


 スーツを着たОLっぽい人に話しかけられた。


 黒い髪で、ポニーテールにまとめており、随分顔が綺麗だった。


「私だよ、私、雪女の雪埜千里」

「ええええええええ! 全然違うじゃないすっか!」


「うん、髪切って染めた」

「もう雪女らしさゼロっすよ」


「君には謝りたかったんだよ。足、ごめんね」

「いやいやいいや、僕らこそすいません! 色々本当に……」


「ごめん、それだけ、これから仕事だから、じゃあね!」


 なんか明るくなったなあ。

 色々吹っ切れたんだろうか。


 夢から覚めて、前を向いて生きていけるようになったんだろう。


 何もかもが変わっても負けず、前を向いて生きていける人か……。


 きっとあなたみたいな人は、幸せになれますよ。


「雪埜さん!」

「はい?」


「季節の変わり目なんで、風邪に気を付けてくださいね!」

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部長がまた変なもん作った 夜橋拳 @yoruhasikobusi0824

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