日常編

君はロックすら聞かない

(日常編の扱いに関しましては、あらすじをご覧下さい)


9月中旬、付き合ったばかりの帰り道より。


亜「部長、この前流してた曲ってなんでしたっけ?」


景「斉藤和義のやさしくなりたいって曲だけど……もしかして聞いたこと無かった?」


亜「はい、知らない曲でしたね」


景「ぇぇえええ!? めちゃくちゃ有名な曲だよ? たしかにちょっと古いけどさ」


亜「うーん、僕あんま音楽聴かないんすよねー。あれがロックってやつですか?」


景「まあ、そうだね言うところの邦ロックだね。どう? 良かった?」


亜「結構いい曲だったと思います」


景「だろだろ、またおすすめの音楽聴かせてやるから、喜んで沼れ」


亜「ははは、ありがとうございます」


景「ところで、君からはオススメの曲とかないのか?」


亜「え?」


景「いくら音楽を聞かないって言っても、1曲も聞いた事無いわけじゃないだろ?」


亜「うーん、そうっすね。強いて言うならケニー・ロギンスのデンジャーゾーンは歌詞も全部覚えてます」


景「おおおお、随分渋いのが出てきたな。トップガン好きなの?」


亜「いや、見たことないですけど……父が好きでよく聞いてたんです。きっと父は好きなんでしょうね」


景「私も好きだよ、トップガン」


亜「そうなんですか」


景「DVDあるからさ、今度君ん家で一緒に見ようよ」


亜「……ごめんなさい。あの映画だけはどうしても」


景「? もしかして嫌いなの?」


亜「いや、そういう訳じゃないんですけど、あの映画、見たことは無いんですけど。戦闘機に乗ったパイロットが死ぬシーンあるってのは知ってるんです。なんて言うか、飛行機の恐ろしさ恐ろしさみたいなのを描いていそうで、ちょっと怖いなって」


景「……そっか」


亜「そうなんですよ……すいません」


景「やっぱり一緒に見ようか」


亜「なんで!?」


景「あれは戦闘機の恐ろしさを描いてる映画じゃないよ。戦闘機の恐ろしさを乗り越える勇気描いた映画なんだ。だから、君こそ見るべきだと思う。


大丈夫、ひとりじゃないから、私も一緒に見るから」


亜「……たしかに、そうかもしれませんね。食わず嫌いは良くないですね」


景「そそ、代わりに私の嫌いな映画も持ってくるから、今度の金曜は泊まりがけで映画見よう」


亜「いや、部長の嫌いな映画はいいですよ」


景「あ、そう? じゃあ代わりにロックバンドのCD持っていくよ。今度は洋楽の」

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