第7プラン(1件目:完結編):始まりの始まり
とうとう私たちのお店は開店の時を迎え、それと同時に店内にはたくさんのお客さんが押し寄せた。老若男女を問わず大好評で、商品は飛ぶように売れていく。開店前は不安もあったけど、幸いなことにそれは杞憂だったみたいだ。
また、事前に町の各所で配布したチラシの効果もあったようで、具材の無料増量サービスが出来るクーポンを利用する人も結構多かった。そして商店街の様子を見に行った店長の報告によると、私たちの狙い通り、相乗効果で各商店も久しぶりに大盛況らしい。
共同仕入れを導入したことによる価格引き下げの効果で、総合商店の価格優位性が低下していることも大きいと思う。価格に大きな差がないのなら、質の高い方を選ぶのは自明の理だしね。
きっと総合商店は今ごろ閑古鳥が鳴いているだろうな。でもまだ戦いは始まったばかり。油断は出来ないし、次々と新たな手を打って追従を許さないようにしないと。
「セレーナ、コロッケサンドの在庫が残り少ないよ」
店のカウンターからソフィアの報告が入る。その向こう側には順番待ちをしているたくさんのお客さんたち。それを目の当たりにして私は胸が熱くなる。
おかしいな……なんか私の瞳が潤んでる……。
「セレーナさん、急いでコロッケサンドを追加で作りましょう」
その時、満面の笑みを浮かべて私の両肩に手を置いてくるサラ。その春風のような表情は、見ていて心が癒されてくる気がする。
なんだか私よりも年上のお姉さんみたいな安心感がある。
「セレーナさん! ボクとサラだけじゃ作るのが間に合いませんよ! 早く手伝ってくださいよっ!」
店の奥で忙しそうにサンドイッチを作っているザック。まだ開店初日だというのに手慣れた様子で次々と具材をパンに挟んでいる。
もちろん、何日も前から練習で作ってきているけど、それ以外にもプライベートな時間を使って努力してきたんだろうな。彼はそういう真面目な子だから。それに最近はいつにも増して自分に自信も出てきたみたい。
「セレーナちゃん、コロッケサンドの包装紙はこれで良かったかな?」
「あ、はい! それで合ってますっ!」
私が頷くと、店長はその手に持っていた包装紙でコロッケサンドを丁寧に包んでいく。今日は初日ということで助っ人に来てくれて、本当にありがたい。
店長はいつも私たちを見守ってくれている。勇気付けてくれたり、アドバイスをしてくれたりしている。後ろにいてくれるおかげで、私は前だけを向いて進むことが出来ているんだ。
フルール薬店にはご迷惑を掛けっぱなしで申し訳ないけど、だからこそこのご恩はいつか何千倍にもして返したい。私はそれを神様に誓う。
「よーしっ! 私もいっぱいサンドイッチを作るぞっ!」
私は気合いを入れながら腕まくりをすると、ザックたちの作業に加わった。
(1件目:営業終了/2件目につづく……かも……!?)
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