【間話】君と一緒に
チク、タクと時計の針は進む。時計は壊れない限り止まってはくれない。
皇鬼はそんな時計を壊しそうになるくらい、時が止まってくれればいいのにと思っていた。足早に過ぎ行く時間の流れ、それに身を任せたくなかった。
皇鬼は千年桜の断木を許可したものの、その許可してしまった自分自身が嫌で仕方がなかった。あの日、朧月夜の下で誓った約束を破ってしまったのが悔しくて、悲しくて、苦しかった。そんな様子を人間の前では全く出さずに、気丈に振る舞う皇鬼を見て、側近たちは悲しくなった。
「皇鬼、大丈夫かな……」
伊万里が皇鬼の居ない執務室のソファーで呟く。
「私には大丈夫のようには見えません」
貴臣がそれに返答する。
皇鬼は仕事が終わると、すぐに寝室に戻る。その理由は側近ならみんなが知っていた。
「結局さ、朧姫のことはどうなったの?」
「朧月志乃という方ですね。家族構成は母父に兄2人と言ったところで、パッと見は普通の家族ですよ」
「んぁ? パッと見?」
「両親の素性が一切分からないのですよ……私が調べても分からないんですよ!」
「臣くんでも分かんないか……これは厄介」
嫌な間が開く。
「皇鬼はなんで朧姫見つけたのに、千年桜切るなんて言っちゃったんだろうねー」
「それは皇鬼様にしか分からないことですからね……」
はぁと盛大に大きなため息を同時に着いた。
***
皇鬼は寝室のベッドに寝転がって、紫色の石に話しかけていた。
「朧姫、ついに明日だよ……本当にごめんね、約束守れなくて」
キラリと輝く耳飾り。それを嬉しそうに目を細めて皇鬼は喜んだ。
「明日は一緒に見に行こうね。俺達の千年桜を……」
そして皇鬼は涙を流しながら眠りについた。
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