第13話 ねぇ?俺には何ができる?
マサトと知り合ってから2年くらい過ぎた14歳の秋…マサトと私は付き合うことになった。
当時、14歳の私は…喧嘩や万引きなどの素行不良で警察に補導される事が日常茶飯事だった。
一応…彼ら(親)にも警察から連絡はいくものの、迎えに来るなんてことは1度もなく、その都度マサトや美月さんが警察署に私を迎えに来てくれていた。
マサトが20歳になる直前
その日も、補導された私を迎えに来たマサトと夜中の海を見に行った。
『 まいの親ってさ…いつも迎えに来ないけど娘の心配とかってしないわけ??』
いつも優しいマサトが少し苛立っているように感じた。
『 えー?私、今まで心配なんてされた事ないし…アイツらにとって、私は子供じゃないんだよ??』
そう言いながら笑う私を見て、マサトの表情が歪む。
『 まい…悲しくねーの??』
『 悲しくないよー?そーゆーの、もう慣れたし…。』
そう言いながらクスッと笑う私をマサトが後ろから優しく抱きしめる。
『 もう…いいよ、無理して笑わなくて。泣きたいときはちゃんと泣けよ…。』
私を抱きしめているマサトの腕に、少し力が入った気がした。
『 泣きたくない…んじゃなくてもうずっと泣けないんだよ、私は…。可愛げなくてごめんねー?』
そう言いながら私はまた笑う。
『 まいっていつもそうやって泣いてるみたいに笑うのな…。いつもそんな風に悲しそうな瞳で…壊れそうに、消えてしまいそうに笑うんだ。ねぇ?まい…俺には何ができる??』
いつになく真剣な声でマサトが言うから、私は何も言えなくなってしまった。
そんな風に見えていたの?私って…。
とりあえずの笑顔を作るようになったのはいつからだったんだろう??
信じることとか期待することとか
泣くこととか叫ぶこととか
自分の感情なんて、とっくの昔に手放してしまっていた。
彼らに何をされようが、何を言われようが、驚くこともなければ痛みさえも感じない。
いや、もしかしたら私は…痛みを感じないフリをしていただけなのかな??
感情を手放し、痛みを乗り越えたようなフリをして、ただ傷跡を新しい傷で塞いでいただけなのかな??
何も言えなくなって、そんなことを考えている私に
『 まい?俺たち付き合おうか…。まいが抱えている闇の深さだとか、まいの頬に当たる風の強さだとか、まいだけにしかわからないことはきっとたくさんあるけど…。いつでもそばにいるよ。他には何もできないかもだけど。まいが怖がらずに夜を過ごせたり、穏やかに朝を迎えたり…なんの気負いもなく幸せだよと言って笑って欲しい。』
私の瞳から不意に涙が溢れた。
『 …………。』
返事をしようとしても、溢れるのは涙だけで言葉が何一つとして出てこない。
『 泣きたいだけ泣いていいよ。涙が枯れるくらい泣いていい。なにも怖くないよ。俺がまいを守るから…。』
何年ぶりに人前で泣いただろう…?
そうやって、私は何時間泣いていただろう…?
私が泣き止むまでずっと、マサトは優しく抱きしめていてくれた。
この日から、私とマサトは付き合うことになった。
ありのままの私を受け止めてくれるマサトとは、この先もずっとずっと一緒にいられると…当時の私は信じて疑わなかった。
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