第7話 書く理由
『 お前たちなんて産むんじゃなかった!見ているだけでイライラする!さっさと死ね! 』
殴るとか蹴るとか…そんなのは日常茶飯事で、当時子供だった私たちに出来ることなんてないに等しい。
謝ってもだめ。
泣くともっと殴られる。
この家から逃げ出すことも出来ない。
私たちに出来ることはただひたすら『 待つ 』ことだけ。
彼らの怒りが鎮まるのを、全身の痛みを堪えながらただひたすら祈るように待つことしか出来ない。
身体に受ける肉体的苦痛だけが暴力ではない。
彼らの発する言葉も、私たちの心を破壊する立派な暴力。
ネグレクト(育児放棄)もそれに値する立派な暴力だ。
私は、自分の不幸自慢をしたいわけではない。
私よりも辛い思いをしている子供は、世の中にはたくさんいるだろう。
虐待を受けて命をおとす子供もいる。
そんなニュースや報道を目にする度に、私はまだ彼らに殺されなかっただけマシだったんだろうと思う。
もちろん感謝などしていない。
彼らに対する恨み節なら何時間でも書き連ねることが出来るくらいだ。
そもそも私も妹も『 産んでくれ 』と頼んだわけじゃない。
彼らが彼らの都合で産んだのだ。
頼んでもいないのに勝手に産んでおきながら、望んだ男の子ではなかったから『 産まなきゃ良かった、イライラする、死ね 』というのはあまりにも理不尽。
彼らの気分で殴る蹴る、食事は1日1回菓子パンかカップ麺を置くだけで『 親 』だなどと言って欲しくない。
ではなぜ、私はこうやって書いているのか?
なぜ、戻れもしない変えられもしない過去のことをわざわざ書くのか?
私は今までずっと
私の存在自体が罪(悪)なのだと思って生きてきた。
過去は変えられない。
私や妹が受けた痛みや傷も消せない。
だけどもしかしたらその過去は、変えることは出来なくても手放すことなら出来るんじゃないか?と思うようになったから。
どんなに孤独を感じたとしても。
どんな痛みや傷を受けたとしても。
たとえ人前で泣くことが出来なくなったとしても。
たとえ伝える言葉を失ったとしても。
たとえ真っ暗闇の中で光が見えなかったとしても。
それでも閉ざしてはいけない。
自分の中の『 心 』そして『 感覚 』というものだけは、自分で閉ざしてはいけないんだと思う。
生きていくってなんだろう?
頑張ってってどうやって頑張るの?
その答えは、今の私にもまだはっきりとはわからない。
だけど陽は昇り、暮れていく。
毎日毎日、必ず陽は昇り、暮れていく。
ひたすらそれを繰り返す。
この広い地球の彼方では、幾つもの様々な出来事が交差している。
そんな中で
色んなことがあって、色んな朝を迎えて、色んな愛に出逢い、そしてその愛に色んな形があるのだと知った。
色んな人を傷つけて、色んな罪を犯して、たくさん色んな間違いをして、そしてそこから色んな事を学んだ。
変えられない自分の過去を、ほんの少しだけ振り返ってみる。
まだまだ怖い。
だけど、いつかそれが出来るようになった時…私はその過去に手を振り、手放すことができるのではないか?
だから書く。
私は私の為に、過去を手放すことが出来るようになるまで書いていこうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます