第4話 神様はいますか?
その日から、私と妹に対する彼ら(両親)の暴力が、どんどん激しくなっていったように感じる。
弟のいる空間(部屋)に入ることは許されず、母親はそれまで作っていた食事も私と妹には作らなくなった。
家に帰ると、彼らや弟が過ごすリビングの扉は閉められ、私と妹は玄関を入って廊下を進み一番奥にある部屋の中から出る事は許されなかった。
一番奥にあるその部屋には窓がなく昼間でも薄暗い。部屋の明かりをつけるスイッチは私たちの手の届く場所にないので、その空間にいると時間の感覚がほぼなくなる。
その部屋の隅に小さなテーブルがひとつあり、テーブルの上には菓子パンが1個か2個置いてある。菓子パンがない日は代わりにカップ麺が1個か2個置いてある。
電気ポットが1台あったので、カップ麺のお湯を入れたり、喉が渇いたらそのお湯をコップに入れて冷まして飲む。
テレビや冷暖房はない。
トイレに行く以外の理由でその部屋から出る事は絶対に許されなかった。
テレビもない、電気もつけられない、時間の感覚もわからないその部屋で、離れたリビングから少しだけ聞こえてくるテレビの音や、時折漏れてくる彼らや弟の笑い声を聞いていた。
お腹が空くと、テーブルにある菓子パンかカップ麺を2人で分けて食べた。
『 お姉ちゃん、美味しいね?』
『 うん、足りなかったらお姉ちゃんの分も食べていいよ?』
『 だめだよー。私が食べたらお姉ちゃんの分がなくなるもん…』
『 大丈夫だよ?お姉ちゃん全然お腹空いてないから!』
そんなはずない。
私だってお腹は空いている。
いくら6歳とはいえ、菓子パン1個やカップ麺1個なんかで1日の食事が足りるわけない。
でも、私はそう言って、妹に少しでもたくさん食べさせてあげたかった。
食事が終わると、長座布団とタオルケットが2枚あったので、私と妹はいつもそこで2人でくっついて眠った。
わからなかった…。
どうしてこの場所にいるのか?
どうして叱られているのか?
どうしたら上手く話せるのか?
どうしたら笑ってもらえるのか?
どうしたら名前を呼んでもらえるのか?
どうしたら抱きしめてもらえるのか?
どうしたらご飯をたくさん貰えるのか?
どうしたら暗い部屋から出られるのか?
私はふと、保育園の先生が言ってたことを思い出した。
『 みんなで神様にお祈りしましょうね?』…って。
神様はいますか?
神様がいるのなら、教えて下さい。
心の中で何度も、私は祈った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます