第21話 ランカーの仲間入り

「収斗くん! これは大変なことよ!?」


 ギルドに報告に行くと探索者カードを見てなにやら騒ぎ始めた真理さん。


「えっ!? 何がです?」


「全国のDランクダンジョンの中での最速タイムよ!?」


「早いなぁとは思ってたんですけどね」


 僕はそんなに大変な事になっているとは思ってもみなかった。


「そんな悠長な! EランクパーティーでDランクダンジョンの攻略最速タイム叩き出すなんて前代未聞よ!?」


「えっ? そ、そうなんですか?」


「そうよ! 見て? 今収斗くん達の探索者シーカーカードを処理したから、液晶のランキングがのっているところあるでしょ? あそこが……」


 Dランクダンジョンレコードの所のパーティー名が『明鏡止水』になる。


「おぉっ! 賢人!」


 指差して見るように促す。

 皆の目線が液晶に注目される。


「おぉ! すげーな! ランキングに載ったのか!?」


「ヤバいっす! これで自分ら有名人じゃないっすか!?」


「えぇー!? すごーい!」


 僕達が騒いでいると周りの人も騒ぎ出した。


「おいおい。久しぶりじゃねぇか? Dレコード更新されたの」


「だな。すげーのが出てきたなぁ」


「なんかあっちで真理ちゃんがまだEランクだとか言ってたぜ?」


「だってよぉ、Cランク以上の探索者シーカーが攻略してもレコードにはならねぇんだろ?」


「そうそう。だからか、Dレコードはもう更新されないんじゃないかって言われてたんだよな?」


「あぁ、しかも見ろよ。右に『-28:25』って表示されてるだろ? あれ、前のタイムより28分25秒早いってことだぜ?」

 

 何やら周りの人が話しているのを聞いていると、Dランクダンジョンのレコードはもう更新されないだろうと言われていたらしい。


 そのタイムが28分も更新されたから凄いことなんだって。

 僕達にはあんまり実感がないけど。


「あれ? Dレコードとったんだったらよぉ、パーティーランキングの方にものるんじゃねぇか? 三百位まで載るだろ?」


「パーティーの方は載ってるかもな!」


 みんなが携帯端末で検索し始めた。

 みんなが検索しているランキングっていうのは、ダンジョン攻略の数や功績がポイント化されているんだ。


 そのポイント数で上位三百組がランキングページに載っているんだ。


 僕も慌てて携帯端末を確認する。

 もしかして僕達もランカーになる?


 ワクワクしながらランキングページを開く。

 すると、奈々が覗き込んできた。

 猛のは賢人が一緒に見ている。


 あっ……。


「えっ!? 載ってるじゃーん!」


 そう。パーティーランキングに載っていた。

 二九八位。

 僕達は立派にランカーの仲間入りをしていたんだ。


「ここからだね!」


「だな!」


 僕が賢人に言うと頷いて拳を突き出してきた。

 同じように拳を突き出してコツンとぶつける。


 すると、奈々と猛も同じように拳を突き出してきた。


「僕達はここから成り上がる!」


「そうだな!」


「いいっすねぇ!」


「よーしっ! ファイトーーー」


「「「「おぉー!」」」」 


 これが僕達のランカーとしてのスタートだった。

 これからは、ランカーとしての怒涛の日々が始まる。


◇◆◇


 とある場所で。


「チッ! 何やってんねん自分! 失敗してるやんか!? もう失敗しない言うてたよなぁ!?」


 そういうと椅子を蹴り飛ばし。

 けたたましい音が響き渡る。

 何やら思惑と違っていたようだ。


「す、すみません! 一撃必中ゲイボルグが居なければらくに始末できると思ったのですが……」


 謝っている人は、床に頭を擦り付けている。

 その頭に足を乗せて足をひねり、頭をすり潰すように力を入れているようだ。


「ほおぉぉ!? それでなんで最速タイムになんねん! あぁ!?」


「そ、それが、居なかった間に強くなっていたようで……そうじゃなきゃ今までの戦法で上手くいったはずなんです!」


「言い訳すんなや!」


 踏みつけていた頭を蹴り飛ばす。


「も、申し訳ありません!」


 頭からは血が流れ出す。

 それでも地面に頭を擦り付けて謝っている。

 傍から見たら滑稽にも見える。


「いや、もうえぇ。違うやつに頼むわ」


「そ、それは……」


「お前はいらん」


 その目は凍てつくような。

 人を人と思っていないような目をしていた。

 謝っていた男はその言葉に狼狽えているようだ。


「お、お助けを……」


ズシュッ


 助けを求めていた人の背中から刀が生えている。

 前から貫かれたようだ。


「ワイはなぁ。役に立たんやつはいらんのよ。そして、俺の立ち位置を脅かすやつもいらんのや。その為には手段は選ばん」


 刺された人は胸から血を流し。

 ドサリと音を立てて地面に倒れ伏した。


 その男は手を叩くと黒ずくめがやってきて死体を回収していった。

 そして、部屋の外を眺める。


 その部屋の外は煌びやかで、宝石が散りばめられたような景色が広がっていた。

 コチラとあちらではまるで住む世界が違うと言われているように。


「困りますよぉ。お頭ぁ。また僕のパシリいなくなったじゃないですかぁ」


「あぁ? あんなんどっからでも調達出来るやろ? その辺の荷物持ちポーターでも連れてきたらえぇやろ? あんな奴らなんの使い物にもならんのやからなぁ!?」


「そんなこと言いますけど、お頭が気にしてる整理整頓の彼も、元荷物持ちポーターみたいですよぉ?」


「クックックッ。せやったなぁ。ゴミはゴミらしくしとればいいんやけどなぁ。ま、上がってはこれんやろ。ワイがいる限りな」


 笑っているその人の目は笑っていなかった。

 ランカーとなってしまった明鏡止水。

 この男によってトップランカーへの道は阻止されてしまうのだろうか。

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