第20話 修行の成果

「真理さん、お久しぶりです!」


 皆で報告しあった次の日、ダンジョンに潜ることにした。

 なんだかんだ言って強くなったか試したくて皆ウズウズしてたみたい。


「あら、収斗くん。よく無事だったわね……色んな意味で」


「はい! 大変でしたけど、薫ちゃんのおかげで強くなれたと思います!」


「そう。それはよかったわね。私も激務に耐えたかいがあったわ」


 真理さんが遠い目をしている。

 結構キツかったんだね。


「それで、ダンジョンにいこうと思いまして……」


「オッケーよ。Dランクダンジョンね?」


「はい! 前回行ったダンジョンに行こうかと」


「うん! わかったわ」


 手続きをしてもらい。

 Dランクダンジョンにリベンジだ。

 配信するのも忘れない。


「あっ、フォーメーションどうすんだ?」


「うーん。それなんだけど、とりあえず、前と同じでいいかなって」


「そうか。じゃあ、俺が前だな!」


 賢人が意気揚々と前に出る。

 やる気満々だね。


「自分も前っすよね?」


 猛も前に出る。


 さっそくオークのお出ましだね。


「自分が「ふっ!」」


 オークは頭が転がり倒れた。

 猛が呆然としている。


「なんか言ったか?」


「早すぎるっす!」


「そうか?」


「自分の出番がないじゃないっすか!?」


「それはしょうがないだろ?」


「まぁまぁ、二人とも。猛、前に出たい気持ちはわかるけど、倒すのが早いのにこしたことは無いし、賢人に頼もう?」


 二人が言い争いしているのを宥める。

「ぐぬぬ」と言いながらも猛が引いてくれた。


 オークが出てくる度に賢人が一目散に駆けて行き、倒す。

 ダンジョン攻略は順調に見えた。


 また黒い影が横切ったように見えた。

 そのすぐ後にドドドドッという足音が近づいてくる。


「ここのダンジョンってこういうイベントが付き物のダンジョンなんだな? いいねぇ」


 颯爽と前に駆ける。

 オークの大群が来た。


斬胴丸きどうまる


 青い光の筋が斬撃として真横に広がって飛んでいく。

 纏めて何体ものオークが葬られる。

 以前とは威力が段違いだ。


「自分もやるっすよぉ!」


 盾を構えてオークに向かっていく。


 あれ? 盾で待つんじゃないの?


「シールドバッシュっす!」


 ズドンッとオークが吹っ飛んでいく。


 えっ? 攻撃した。


「まだまだ行くっすよぉ!」


 盾で壁に大量のオークを押し付けている。

 これはいいね。


「僕も────」


「私も行くぞぉー! 火の風!」


 火炎放射がオークを焼き焦がしていく。

 出た。奈々の合成魔法。

 初級しか使えなくても合成すれば協力になる。


 それは薫ちゃんの案だったんだ。

 やってみたらホントにできたんだよね。


 オークが何体かこちらに来ている。

 横を通りながら足を切り付ける。

 オーク共がこちらを威嚇しながら睨みつけてくる。


「きなよ?」


「ブオォォオ!」


 拳を振り下ろしてきた。

 フワッと拳の風圧を利用したかのように腕になぞって浮き上がる。

 そして、首にナイフを突き刺す。


「次! ナイフ二本だして」


 宙に浮いた状態でスキルを使う。

 ナイフが二本ポンッと穴から出てくる。

 掴むと投げる。


 ストッと胸に突き刺さりオークは倒れる。

 もう一体は目に深く刺さり脳まで到達したのだろう。

 そのオークも倒れた。


「収斗、相変わらず戦い方がえげつないよー!」


 奈々が野次を飛ばしてくる。

 なんてこというの。

 頭を使ってるっていってよ。


 僕も少しは力ついたけど、賢人とか猛みたいな肉体にはなれないからね。

 そもそも身体の大きさが違うもの。


 次々来るオークを倒す。

 ある程度たまったあたりで。


「【整理】」


 オーグが穴に落ちていったことを確認する。


「【閉じる】」


 穴が閉じた。


 修行している時に発見したんだけど、すぐに閉じると次へのクールタイムがないことを発見したんだ。


 実際には、穴が空いている時間の三十秒をチマチマ一秒づつ使ってたら三十回は使えるってこと。これを発見したのは僕の中で革命だった。


 そして、何回もスキルを使っているうちにスキルの方が学習していったんだよね。

 僕の指示を理解して動いてくれるようになったの。


「ナイフだけしまう。後はいらない」


 スキルに指示を出すと目の前にウインドウが出てきた。


『処理しました 』


「ありがとう」


 そういうとウインドウが閉じる。


「ナイフ三本だして」


 三本同時に指に挟んでもち、投げる。

 三体の首に突き刺さり倒れる。


 これを繰り返すことで永遠とナイフは循環できるのだ。

 ある程度の量があれば数が多くても戦える。

 これが僕の戦い方。


「ビリビリの水!」


 オークに水がばら撒かれ、バリバリと雷撃がはしっていった。

 それが最後のオークだった。


「おぉー。終わったね」


 オークは全滅した。


「なんかちょっと寂しいような。複雑な気持ちだな?」


「なんで?」


「守ってあげる必要がないっつう感じがなんだか慣れない」


「ふふふっ。強くなったでしょ?」


「あぁ。最高のパーティーだ」


 賢人と僕は拳をつけて称えあった。

 ここからは順調だった。

 さっき集まったのは、全部のオークが出てきたんじゃないだろうか。


 なんにも出てこないままボス部屋に来た。

 そして、ボスでも勢いに乗った僕達を止めることはできず。


 ダンジョンを攻略した。

 これが、まさかこのダンジョンの最速レコードになるとは思ってもいなかった。

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