第19話 帰還と報告

「わぁぁ! 戻ってきたぁぁ! あぁぁぁ!」


 目の前には街が見える。

 奈々が周りから見れば大袈裟に見えるようなリアクションで喜んでいる。


 この一ヶ月間は、山での生活だった為色々とストレスが溜まっていた。

 日々侵入してくる奈々と僕の理性の戦いだってあったんだ。


 これで終わりだと思うと嬉しいような、寂しいような。

 とりあえず、僕達はやり遂げた。

 僕も奈々も強くなったと思うんだよね。


 スキルの使い方も深く知ることが出来た。

 いい修行になったと思う。


「それじゃあ、役所に行きましょ?」


「うん。賢人と猛とも役所で待ち合わせしてるしね」


 役所に向かっていると風格のある二人が立っている。

 なんか凄く重いオーラを漂わせている二人。


「賢人! 猛! 久しぶり!」


「おう! 強くなったか? 収斗!」


「お久しぶりっすね! 自分、強くなって戻ってきたっす」


 二人は凄くやりきった感がある感じ。

 僕の後ろには何故か隠れている奈々。


「奈々?」


「なんか凄い俺達強くなりましたオーラがあって近付きにくい」


「何言ってるの? 僕達だって強くなったし、自信もったら?」


「ううぅぅ」


 なんか威嚇してる。


「せっかく久しぶりに会ったから一緒にご飯でもどう? 皆がどんな修行して来たか気になるしね」


「おう! いいな!」


「どこでもいいっすよ?」


「甘いもの甘いもの甘いもの甘いもの甘いもの」


 奈々が呪文みたいに甘いものを欲している。


「じゃあ、なんでもあるファミレスにしよっか」


「「「賛成!」」」


 皆でファミレスに移動した。

 あっ、薫ちゃんは着くなり真理さんに拉致されて行った。

 居なかった一ヶ月、業務が鬼のように辛かったみたいなんだよね。


 なんか真理さんに悪いことしちゃった。


「で? 収斗達はどんな修行したんだ?」


「んー最初は山頂まで山登りかな。走って」


「おぉ? 走って登れる山なんてあったか?」


「ないよ。僕達が登った山は標高が二千メートルくらいだからね」


「はぁ? それを走って登るのか?」


「そう。しかもそれは午前中のメニュー」


「無理だろ」


「無理だと思ってたけど最後の方は登れてたよ? 奈々も」


 そう言って奈々を見るとパフェを口いっぱいに入れて満喫していた。

 ときおり「んーー!」と嬉しそうな声を上げている。


「マジでか!? コイツも?」


「うん。慣れって恐いよね」


「そうか。二人ともたしかになんか身体がガッチリとしたか?」


「そうかもね。奈々はガッチリとしたって言ったら可哀想だけどね」


 言われてみれば奈々も以前と比べたら少し筋肉質になったかもしれない。

 毎日見てるとあまり分からなかったけど。


「午後は何してたんだ?」


「実戦訓練だよ。ひたすら戦う」


「それは、俺と変わらねぇな」


「賢人も実戦が多かったの?」


「あぁ。かなりスパルタだったな」


 そうだろうね。

 賢人と修行できて嬉しかったんじゃないかな?

 以前、僕達に賢人をお願いしてきたところを見るとただ怖いっていうのとも違うと思うし。

 

 でもかなり嫌がってた割にはいい関係になれたのかな?


「仲直りできた? 仁さんと」


「いやー。まぁ、修行つけてもらう立場だからな。一応下手に出てたわけよ。ストレスが半端じゃなかったな」


「そうなの? 仁さん優しそうだけど……?」


「あれが優しい? 冗談。地獄だったぜ? 何回死にかけたことか。ボンクラボンクラってうるせえのなんの」


 そっかぁ。

 なんか僕には優しそうに見えたんだけどな。

 気のせいだったかな?


「まぁ、おかげで強くなれた……と思うんだが」


「それなら良かったじゃない?」


「まあな。猛はどうだった?」


 賢人は猛に話を振ると、なんだか遠い目をしていた。


「おーい。大丈夫か?」


「自分も厳しい日々だったっす! なんか配信を見たとか何とか言ってテンションが爆上がりで、ハチャメチャな修行だったっす!」


 賢人が呼びかけると正気を取り戻した。


「えーっと、猛もお父さんに修行つけてもらったんだっけ?」


「そうっす! 母親とイチャイチャしながらっすけどね! ホントにやめて欲しいっす!」


 なんかある意味大変だったみたいね。

 でも夫婦仲が良くていいじゃない。


「仲が悪いより良くない?」


「いやいや、見て見ればわかるっすよ? 小っ恥ずかしいのなんのって! ただ、親父はやっぱり強かったっす!」


 猛のお父さんって会ったことないもんね。

 どんな人なんだろう?


「お父さんも探索者シーカーなの?」


「そうっす! 言ってなかったっすけど、五人衆ペンタゴンっていうパーティーやってるっす」


「ブーーーッ」


 賢人がコーヒーを噴き出した。


「何やってるの? 汚いよ?」


「いやいやいや! 五人衆ペンタゴンってパーティーランキングでトップスリーに入ってるじゃねぇか! なんで言わねぇんだよ!?」


 賢人が抗議しているけど。

 それって。


「賢人には、言われたくないっすよ! 自分も個人ランキングのトップ取ってる人の息子っすよね!? それを隠してたじゃないっすか!? その後の自分の親の話をしにくいのなんのって! この気持ちわかるっすか!?」


 猛が賢人に顔を近づけて唾を吐き出しながら訴えている。

 うん。確かにね。

 あの後は言い出しにくいね。


「す、すまん」


「分かってくれればいいっす! まぁ、そんなこんなでパーティー全員を相手にしごかれたっす!」


 なんだか皆大変な修行を耐えたんだね。

 これは、ダンジョン攻略が楽しみだね。

 あっ、その前にナイフ買い込まなきゃ。


「僕達はこれからランキングトップを目指すよ!」


「「おぉー!」」

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